http://akiba.geocities.yahoo.co. ... 20100514/1273766491「もういい加減、我慢ならねぇ…天王寺、俺とデュエルしろ」
『デュエル?悪い吉野、俺カードゲームとかさっぱりで…』
「決闘って意味で使った!」
奴の目に本気の光が見えた。
『どうやらマジみてーだな』
「当然だ」
『放課後、校舎裏に来い。そこでジ・エンド、くれてやる』
「ああ…だがひとつだけ言っておく」
『なんだ?』
「俺はそう簡単にやられる男じゃない」
『上等だ。そんなテメェの吠え面、見物だな』
「…放課後だ。忘れるんじゃねぇぞ」
『ああ、理解ってる』
狂犬とまで呼ばれる吉野晴彦との、熱い、火花散る約束。
その約束を忘れた俺は、放課後まっすぐ帰宅した。
「うははははは」
そしてテレビを堪能したさ。
「わははははは」
続く土日の休みは、シティでエンジョイしまくり。
ちょっと忘れっぽいのよ、俺…。
吉野には悪い事をしたと思ってる。
その報いなのかどうか、夜遅くにマダムに招集をかけられた。
マダムの存在は高貴すぎて、逆らうこととかできない。
娘さんとは大違いだ。
で、その娘さん、困ったことに放浪癖がある。
行く場所は大体決まっているので、俺たちはすぐに出発したのだ。
それは森の中。深夜の森の闇は深い。俺は動物たちにビビらされなが
ら、件の娘さんを探した。
やがて…。
「…うーわ」
いたよ…こんなところに。
「寝てやんの…おい、起きれ」
≪…くー≫
「こんな時間に爆睡してると夜眠れなくなるぞ」
≪…くー≫
「おいってば」
≪…すやっ≫
「ちっ……へい、小鳥さんよ!夜だぜ!」
かなり強く声をかけてみる。
≪………≫
やっぱりダメか。
「しゃーないね」
肩をゆすってみたが、やはり起きる気配はない。
長く寝ているのか、体温も低い。
「こんなこともあろうかと」
小鳥は爆睡タイプだから、なかなか目を覚まさない。方法はふたつ。
ひとつは好物で釣ること。もうひとつは苦手なもので圧力をかけるこ
と。
「小鳥。おまえの大好きなものだ」
ポケットから取り出したそれらを、一枚づつてのひらに落としてい
く。チャリーン、チャリーンと音を立てる。大量の小銭だ。
≪くふぅ≫
「それ、どうだ」
チャリーン、チャリーン。
≪うーん≫
むくり、と起きあがった。
「よぅし、こっちだこっち」
小銭を鳴らしながら、俺は来た道を引き返す。
小鳥はゾンビみたいな動きでついてくる。
そして俺は小鳥を無事に家まで送ることに成功した。