~夏に降る雪~
それはとても美しくて、
冷たくて、脆くて、儚くて、
降り積もることも無く、風の中、人知れずに散ってゆく。
「今年も頑張ったな。来年まで、ゆっくりお休みなさい」
私は手を伸ばし、最後のひとひらを掬い取った。
小さな結晶は、音も立てずに消えていった。
掌に残る感触を握り締めながら、私は夜空を見上げた。
「夏の月夜の雪、か…」
風が通り過ぎてゆく。まるで何事も無かったように。
——これは、
冷たい光に照らされた静寂の中の、
私と、小さな奇跡との、
小さな出会いであった。
「改めまして、今年も、その…よろしく…な」
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