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seagull
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seagull
2009-06-05 09:38
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回复: clannad渚线剧本注音计划(一周目进行中)
同棲編
客足(きゃくあし)も途絶(とだ)え始(はじ)めた午後(ごご)、いつものように俺(おれ)は店内(てんない)で暇(ひま)を持(も)てあましていた。
オッサンは最後(さいご)のパンを焼(や)き終(お)えると、宿題(しゅくだい)を終(お)えた子供(こども)のように嬉々(きき)としてどこかに出(で)かけてしまった。
朋也(ともや)(少(すこ)し、外(そと)の空気(くうき)を吸(す)ってこよう…)
俺(おれ)は表(おもて)に出(で)た。
晴(は)れ渡(わた)った空(そら)を見(み)ながら伸(の)びをする。
朋也(ともや)「ふぅ…」
そのまま視線(しせん)を下(お)ろした先(さき)…
公園(こうえん)の高(たか)い位置(いち)に、人(ひと)がいるのを見(み)つけた。
高(たか)い位置(いち)、というのはまさしく空中(くうちゅう)で、一瞬(いっしゅん)驚(おどろ)く。
が、よく見(み)ると、なんてことはなく、梯子(はしご)に登(のぼ)った作業員(さぎょういん)だった。
街灯(がいとう)を取(と)りつけているようだ。
それは見覚(みおぼ)えのある光景(こうけい)だった。
学生(がくせい)の時(とき)に、俺(おれ)もその仕事(しごと)を一日(いちにち)だけ、手伝(てつだ)ったことがあった。
そして、あの日(ひ)、俺(おれ)は思(おも)い知(し)ったはずだった。
いかに自分(じぶん)が、ぬくぬくと暮(く)らしていたかを。
そして、厳(きび)しい社会(しゃかい)が待(ま)っていることを。
なのに俺(おれ)は、未(ま)だなお、古河家(ふるかわけ)というぬるま湯(ゆ)に浸(つ)かっていた。
あの時(とき)の作業員(さぎょういん)だって、自分(じぶん)とさほど歳(とし)の変(か)わらない男(おとこ)で…そのことでもショックを受(う)けたはずだ。
朋也(ともや)(なのに、俺(おれ)はまだ、こんなところで…)
歯(は)がゆさと共(とも)に、いろんなことを思(おも)い出(だ)していた。
そして、その厳(きび)しさに見合(みあ)う対価(たいか)が得(え)られることも。
あの額(がく)ならば、自分(じぶん)の力(ちから)だけで食(く)っていける。オッサンや早苗(さなえ)さんに頼(たよ)らずに。
俺(おれ)は目(め)を凝(こ)らし、作業員(さぎょういん)の顔(かお)を判別(はんべつ)しようとした。
遠(とお)くてよくわからない。けど、背格好(せかっこう)が似(に)ている気(き)がする。
別(べつ)に違(ちが)ったっていい。俺(おれ)は焦燥(しょうそう)に駆(か)られて走(はし)り出(だ)していた。
作業員(さぎょういん)「ふぅ…」
作業員(さぎょういん)は地面(じめん)に降(お)り立(た)ち、煙草(たばこ)をふかしていた。
納得(なっとく)がいく仕事(しごと)ができたのか、街灯(がいとう)を見上(みあ)げて、何度(なんど)か頷(うなず)いている。
朋也(ともや)「芳野(よしの)…さんっ」
その名(な)を呼(よ)んだ。
芳野(よしの)「あん?」
顔(かお)がこちらに向(む)く。芳野祐介(よしのゆうすけ)…いや、芳野(よしの)さんだった。
朋也(ともや)「ちっす」
芳野(よしの)「………」
芳野(よしの)「…ああ。よぅ」
少(すこ)し考(かんが)えた後(あと)、思(おも)い出(だ)したように、挨拶(あいさつ)を返(かえ)してくれた。
芳野(よしの)「ええと…確(たし)か、手伝(てつだ)ってくれた奴(やつ)だったよな…」
朋也(ともや)「岡崎(おかざき)っす」
芳野(よしの)「ああ、そう。岡崎(おかざき)な」
芳野(よしの)「どうした。また暇(ひま)なのか」
朋也(ともや)「俺(おれ)を雇(やと)ってくださいっ」
そう頭(あたま)を下(さ)げていた。
芳野(よしの)「え、マジか…」
朋也(ともや)「ええ。マジっす」
芳野(よしの)「それは助(たす)かるがな…。こっちは、いつだって人手不足(ひとでぶそく)だからな」
芳野(よしの)「けど、おまえも知(し)ってるように、きつい仕事(しごと)だ」
朋也(ともや)「覚悟(かくご)の上(うえ)っす」
芳野(よしの)「一年前(いちねんまえ)のおまえは、一本立(いっぽんだ)てるだけでへたれてたよな」
朋也(ともや)「それは…慣(な)れれば大丈夫(だいじょうぶ)だと思(おも)います」
芳野(よしの)「………」
朋也(ともや)「頑張(がんば)ります」
芳野(よしの)「そうか…」
芳野(よしの)「OK。雇(やと)おう」
芳野(よしの)「いつから働(はたら)ける」
朋也(ともや)「来月頭(らいげつとう)からお願(ねが)いしたいっす」
芳野(よしの)「よし、わかった」
芳野(よしの)「じゃ、改(あらた)めてよろしく」
朋也(ともや)「よろしくお願(ねが)いします」
握手(あくしゅ)をした。
朋也(ともや)「あのな、渚(なぎさ)」
朋也(ともや)「話(はなし)がある」
俺(おれ)たちは、向(む)かい合(あ)って座(すわ)っていた。
渚(なぎさ)「はい、なんでしょう」
朋也(ともや)「俺(おれ)、新(あたら)しい仕事(しごと)見(み)つけたんだ」
渚(なぎさ)「…え?
仕事(しごと)、変(か)えるんですか?」
渚(なぎさ)にとっては寝耳(ねみみ)に水(みず)。それは当然(とうぜん)で、一日(いちにち)でこんな大事(だいじ)なことを決(き)めてしまうなんて、自分(じぶん)でも驚(おどろ)くほどだった。
でも、現実(げんじつ)を突(つ)きつけられてしまえば、もう、誰(だれ)かを頼(たよ)りにする生活(せいかつ)なんて、これ以上(いじょう)続(つづ)けていられなかった。
渚(なぎさ)「パン屋(や)のお仕事(しごと)、合(あ)わなかったですか」
朋也(ともや)「いや、違(ちが)う。そういう問題(もんだい)じゃないんだ」
朋也(ともや)「正直(しょうじき)、オッサンや早苗(さなえ)さんと働(はたら)くのは楽(たの)しい」
朋也(ともや)「仕事(しごと)も楽(らく)だし、ご飯(はん)だって宿(やど)だって付(つ)いてる」
朋也(ともや)「でもそれじゃダメなんだ。甘(あま)すぎるんだよ」
朋也(ともや)「オッサンや早苗(さなえ)さんに頼(たよ)ってばっかで…」
朋也(ともや)「俺(おれ)、腑抜(ふぬ)けになっちまう」
朋也(ともや)「だから、別(べつ)の仕事(しごと)に就(つ)くことにした」
朋也(ともや)「たぶん、きつい仕事(しごと)だけどさ…それでも今(いま)よりもっとたくさん稼(かせ)げる」
朋也(ともや)「それで、近(ちか)くにアパートを見(み)つけて、下宿(げしゅく)する」
朋也(ともや)「そうして誰(だれ)にも頼(たよ)らず、自分(じぶん)の力(ちから)だけでやっていきたいんだ」
渚(なぎさ)「この家(いえ)…出(で)るんですか」
朋也(ともや)「ああ、出(で)る」
渚(なぎさ)「そんな…寂(さび)しいです」
朋也(ともや)「………」
俺(おれ)は正座(せいざ)をして、改(あらた)まって渚(なぎさ)に向(む)き直(なお)った。
朋也(ともや)「一緒(いっしょ)にきてくれないか、渚(なぎさ)」
そう告(つ)げていた。
朋也(ともや)「寂(さび)しくなったら、ここに帰(かえ)ってきたらいい」
朋也(ともや)「いつだって、そうしてくれて構(かま)わない」
朋也(ともや)「でも、俺(おれ)はそうならないように頑張(がんば)りたい」
朋也(ともや)「俺(おれ)の手(て)で、おまえを幸(しあわ)せにしてみたいんだ」
朋也(ともや)「俺(おれ)だけの力(ちから)で」
朋也(ともや)「だから、そう決(き)めたんだ」
朋也(ともや)「な、渚(なぎさ)」
朋也(ともや)「ふたりで暮(く)らしてくれないか」
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「はい、わかりました」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんがそう言(い)ってくれるなら、わたしはついていきます」
嬉(うれ)しかった。
俺(おれ)は、渚(なぎさ)を自分(じぶん)の力(ちから)だけで、守(まも)っていく。
生(い)きていく理由(りゆう)を見(み)つけた気(き)がした。
渚(なぎさ)「まだ学生(がくせい)ですから…いろんなことできないですけど…」
朋也(ともや)「いいんだよ、何(なに)もしてくれなくても、そばに居(い)てくれれば」
朋也(ともや)「俺(おれ)は、自分(じぶん)ひとりの力(ちから)を試(ため)したいんだから」
歯車(はぐるま)はきしみをあげて、回(まわ)っていく。
いや、それを回(まわ)しているのは、俺(おれ)の思(おも)いだ。
人(ひと)の、思(おも)いだ。
18歳(さい)の今(いま)、俺(おれ)はそのことに気(き)づいた。
休(やす)みの日(ひ)に、ふたりでアパートを訪(おとず)れた。
6畳半(じょうはん)のワンルーム。トイレも風呂(ふろ)もついて、一月3万(いちがつまん)という安(やす)さだった。
だけど、築(ちく)20年(ねん)を越(こ)えていたから、相当(そうとう)に古(ふる)い。
普通(ふつう)の女(おんな)の子(こ)だったら、こんなところに連(つ)れてこられたなら…
そして、それがこの先(さき)の住(す)まいだと言(い)われたならば血相(けっそう)を変(か)えて帰(かえ)ってしまうだろう。
でも、渚(なぎさ)は違(ちが)った。
渚(なぎさ)「素敵(すてき)です」
まだ何(なに)もないシミだらけの部屋(へや)を見渡(みわた)して言(い)った。
そして、小(ちい)さな流(なが)しの前(まえ)に立(た)つ。
渚(なぎさ)「とんとんとんって」
渚(なぎさ)「毎日(まいにち)、朋也(ともや)くんのご飯(はん)作(つく)ります」
朋也(ともや)「いや、学業(がくぎょう)に差(さ)し支(つか)えるから、いいよ」
朋也(ともや)「ただ、渚(なぎさ)はここで暮(く)らしてくれるだけでいいんだ」
朋也(ともや)「そうしたら、俺(おれ)はずっと頑張(がんば)れる」
渚(なぎさ)「そんなの嫌(いや)です」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんだけ、がんばらないでほしいです」
渚(なぎさ)「わたしも、がんばりたいです」
朋也(ともや)「ああ、そうだったな…」
朋也(ともや)「ふたりで頑張(がんば)ろう」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「後(あと)は…おまえの両親(りょうしん)の説得(せっとく)か」
いまだ、オッサンと早苗(さなえ)さんには話(はなし)を切(き)り出(だ)せずにいた。
住居(じゅうきょ)と仕事(しごと)、このふたつを自分(じぶん)の手(て)で用意(ようい)してからにしたかったのだ。
俺(おれ)たちの決意(けつい)の固(かた)さを、そうして示(しめ)したかった。
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)「でも、わたしが頼(たの)めば、なんとかなると思(おも)います」
朋也(ともや)「いや、それは卑怯(ひきょう)だろ」
渚(なぎさ)「え?
卑怯(ひきょう)、でしょうか…」
朋也(ともや)「俺(おれ)がおまえを連(つ)れていくんだからな」
朋也(ともや)「俺(おれ)が言(い)わないと、向(む)こうだって、本当(ほんとう)の気持(きも)ちがぶつけられないだろ?」
渚(なぎさ)「それはそうかもしれないです。わたしだと、きっと優(やさ)しいことしか言(い)わないです」
朋也(ともや)「ああ。それに、これだけは男(おとこ)の務(つと)めだ。おまえに助(たす)けられたら、俺(おれ)が鬱(うつ)になるよ」
渚(なぎさ)「そうですか…」
渚(なぎさ)「わかりました。今回(こんかい)は朋也(ともや)くんにお任(まか)せします」
その日(ひ)の夜(よる)、まずは早苗(さなえ)さんに、打(う)ち明(あ)けてみた。
早苗(さなえ)「そうですか」
早苗(さなえ)「わたしは反対(はんたい)しません。どちらかというと賛成(さんせい)です」
朋也(ともや)「でも、俺(おれ)…連(つ)れていくんですよ、渚(なぎさ)を」
早苗(さなえ)「朋也(ともや)さん」
朋也(ともや)「はい」
早苗(さなえ)「あの子(こ)は朋也(ともや)さんと出会(であ)ってから、とても強(つよ)くなりました」
早苗(さなえ)「そして、今(いま)も、強(つよ)くなろうとしてるんです」
早苗(さなえ)「朋也(ともや)さんと、ふたりで」
朋也(ともや)「ええ…」
早苗(さなえ)「そんなふたりが決(き)めたことです。わたしには見送(みおく)ることしかできません」
朋也(ともや)「………」
目頭(まがしら)が熱(あつ)くなるのを感(かん)じた。
今(いま)、俺(おれ)がしようとしてること…
それは、早苗(さなえ)さんが積(つ)み重(かさ)ねてきたものすべてを、奪(うば)うことじゃないのか…。
いつか来(く)る日(ひ)だとしても…
それでも、それが俺(おれ)で良(よ)かったのか。
朋也(ともや)「すみません…俺(おれ)なんかで」
だから、そう謝(あやま)っていた。
早苗(さなえ)「朋也(ともや)さん、自分(じぶん)に自信(じしん)を持(も)ってください」
早苗(さなえ)「きっと、朋也(ともや)さんは、自分(じぶん)で思(おも)っている以上(いじょう)に、素敵(すてき)な男性(だんせい)ですよ」
朋也(ともや)「そんなことないでしょう…」
早苗(さなえ)「いえ…」
早苗(さなえ)「だって、あの子(こ)が、好(す)きになった人(ひと)ですから」
そう…それだけは自信(じしん)が持(も)てる。
あいつは俺(おれ)を好(す)きでいてくれてるから…
だから、連(つ)れていける。
早苗(さなえ)「もちろん、わたしも好(す)きですよ」
朋也(ともや)「はは…ありがとうございます」
早苗(さなえ)「それに、秋生(あきお)さんも」
朋也(ともや)「マジっすか」
早苗(さなえ)「はい」
朋也(ともや)「いや、あの人(ひと)が一番(いちばん)の壁(かべ)なんすけど」
早苗(さなえ)「まだ、言(い)ってないんですよね」
朋也(ともや)「ええ…」
早苗(さなえ)「頑張(がんば)ってください」
早苗(さなえ)さんは、最後(さいご)に励(はげ)ましの言葉(ことば)を俺(おれ)にかけると、それ以上(いじょう)のことは何(なに)も言(い)ってこなかった。
早苗(さなえ)さんの性格(せいかく)から、いらぬ世話(せわ)を焼(や)かれかねないと思(おも)っていたが、それも杞憂(きゆう)だったようだ。
早苗(さなえ)さんもわかっているのだ。これは俺(おれ)から話(はな)さなければならないことなのだと。
ひとりの男(おとこ)として試(ため)されてる気(き)がした。
気(き)を引(ひ)き締(し)める。
とりあえず俺(おれ)は、オッサンの機嫌(きげん)がいい時(とき)を見計(みはか)らうことにした。
しかしオッサンは、ひとつの言動(げんどう)の中(なか)で、喜(よろこ)びの感情(かんじょう)と怒(いか)りの感情(かんじょう)を同居(どうきょ)させることのできる類(たぐい)まれなる才能(さいのう)に恵(めぐ)まれた人(ひと)である。
それは良(よ)く言(い)えばであって、悪(わる)く言(い)えば『超(ちょう)きまぐれな人(ひと)』だった。
午後(ごご)の平和(へいわ)な古河(ふるかわ)パン。
もうすぐ暇(ひま)を持(も)て余(あま)したオッサンが、姿(すがた)を現(あらわ)すはずだった。
朋也(ともや)(パンも焼(や)き終(お)えて、一息(ひといき)つくところだから、リラックスして話(はなし)を聞(き)いてくれるかもな…)
その姿(すがた)が現(あらわ)れるのをじっと待(ま)つ。
朋也(ともや)(緊張(きんちょう)する…)
が…
秋生(あきお)「なんじゃこりゃぁあぁぁぁーーっ!」
いきなり怒声(どせい)があがる。
その声(こえ)の主(あるじ)が肩(かた)を怒(おこ)らせて現(あらわ)れた。
朋也(ともや)「ど、どうした、オッサン」
秋生(あきお)「どうしたもこうしたもねぇぜ、最悪(さいあく)の気分(きぶん)だぜっ!」
秋生(あきお)「見(み)ろ、これ」
言(い)って、カウンターに叩(たた)きつけたものは、雑誌(ざっし)だった。
それを拾(ひろ)い上(あ)げて、俺(おれ)は目(め)を通(とお)す。
朋也(ともや)「…占(うらな)い?」
秋生(あきお)「ああ、蟹座(かにざ)の欄(らん)を見(み)てみろっ」
『今月(こんげつ)のあなたは大切(たいせつ)なものを他人(たにん)に横取(よこど)りされるかも。大(だい)ショックでしばらく寝込(ねこ)みそう』
朋也(ともや)(ぐはー…ずばり当(あ)たってるよ…)
秋生(あきお)「なっ、胸(むね)くそ悪(あく)ぃだろっ。かっ、縁起(えんぎ)でもねぇぜ」
朋也(ともや)「そ、そうだな…」
秋生(あきお)「てめぇはどうなんだ。自分(じぶん)のところ読(よ)んでみろ」
朋也(ともや)「えっと…」
朋也(ともや)「今月(こんげつ)のあなたは軽(かる)い身(み)のこなしで他人(たにん)のものを横取(よこど)りゲット!
相手(あいて)は大激怒(おおげきど)、逃(に)げるが勝(か)ち!」
秋生(あきお)「てめぇかあぁぁーーっっ!」
秋生(あきお)「しかも、逃(に)げるが勝(か)ちだとおぉぉーっ!?」
朋也(ともや)「ち、違(ちが)うって、占(うらな)いだろ、占(うらな)いっ!」
秋生(あきお)「かっ、まぁ、そうだがよっ…」
秋生(あきお)「でもな、このダークプリンセス今日子先生(きょうこせんせい)の占(うらな)いはよく当(あ)たるんだよ…」
案外(あんがい)可愛(かわい)いところのある人(ひと)だった。
秋生(あきお)「ちっ、なんにしても今月(こんげつ)は最悪(さいあく)の滑(すべ)りだしだぜ」
秋生(あきお)「いいか、しばらく俺(おれ)に近(ちか)づくんじゃねぇぞ、この疫病神(やくびょうがみ)がっ」
大股(おおまた)で歩(ある)いていった。
朋也(ともや)「………」
呆然(ぼうぜん)と立(た)ちつくす俺(おれ)。
朋也(ともや)「はぁ…どうすんだよ、俺(おれ)…」
ため息(いき)をつくしかなかった。
早苗(さなえ)「話(はなし)はできましたか」
朋也(ともや)「いえ、まだっす…」
朋也(ともや)「なんか今月(こんげつ)は無理(むり)なような気(き)がしますよ…」
朋也(ともや)「くそ…ダークプリンセス今日子(きょうこ)めっ…」
早苗(さなえ)「はい?
どちらさんですか?」
朋也(ともや)「いえ、なんでもないっす。くだらない占(うらな)い師(し)っす」
早苗(さなえ)「でも、入居(にゅうきょ)は今月(こんげつ)からなんですよね?」
朋也(ともや)「ええ、そうっす」
早苗(さなえ)「だったら、早(はや)く言(い)わないとダメですよ」
朋也(ともや)「え、ええ…」
秋生(あきお)「うわっはっはっはっはっ!」
いきなり笑(わら)い声(ごえ)が聞(き)こえてきた。
秋生(あきお)「よぅ、小僧(こぞう)」
不気味(ぶきみ)なほどに機嫌(きげん)がいい。
秋生(あきお)「これを見(み)ろ、見(み)ねぇと、てめー、しばくぞこら」
その手(て)には、ロボットのプラモデルが載(の)っていた。
秋生(あきお)「このモデルは入手困難(にゅうしゅこんなん)なんだぞ、どうだ参(まい)ったか、参(まい)ったと言(い)えこの野郎(やろう)」
あれからずっとこれを作(つく)っていたのだろうか。かなり子供(こども)っぽい人(ひと)だった。
秋生(あきお)「見(み)ろよ、このツノの部分(ぶぶん)をよぅ。痺(しび)れるぜぇ。痺(しび)れるだろ?」
朋也(ともや)「いや、さほどは」
秋生(あきお)「ちっ、この良(よ)さがわからんのか、今(いま)の若者(わかもの)はっ」
秋生(あきお)「うーむ…カッコイイぜ」
こんな機嫌(きげん)のいいオッサンを見(み)たことはない。今(いま)がチャンスだ。
朋也(ともや)「な、オッサン」
秋生(あきお)「ああん?」
俺(おれ)の声(こえ)に振(ふ)り返(かえ)るオッサン。
秋生(あきお)「あ…」
その拍子(ひょうし)に、手(て)からプラモデルが落(お)ちた。
秋生(あきお)「うお、なんてこったい!」
拾(ひろ)い上(あ)げて、無事(ぶじ)を確(たし)かめる。
秋生(あきお)「な…なんじゃこりゃああああぁぁぁぁーーーーーっ!」
秋生(あきお)「ツノが折(お)れてなくなってるじゃねぇかよぉーっ!」
秋生(あきお)「てめぇ、一緒(いっしょ)に探(さが)せよ、馬鹿(ばか)っ!」
ふたりで必死(ひっし)に床(ゆか)を探(さが)すも、それは見(み)つからなかった。
秋生(あきお)「おめぇ、やっぱ疫病神(やくびょうがみ)だよっ!」
秋生(あきお)「くそぅ、二度(にど)と、遊(あそ)んでやるもんかーっ!」
オッサンは、走(はし)り去(さ)っていった。
朋也(ともや)「………」
呆然(ぼうぜん)と立(た)ちつくす俺(おれ)…。
早苗(さなえ)「話(はなし)はできましたか」
朋也(ともや)「いえ、まだっす」
朋也(ともや)「なんかやっぱ、無理(むり)な気(き)がしてきましたよ…」
朋也(ともや)「くそ…○ンダムめっ…」
早苗(さなえ)「はい?
どちらさんですか?」
朋也(ともや)「いえ、なんでもないっす。くだらない機動戦士(きどうせんし)っす」
早苗(さなえ)「でも、きっと大丈夫(だいじょうぶ)ですよ」
早苗(さなえ)「誠意(せいい)を持(も)って、真剣(しんけん)に話(はな)せばわかってもらえますよ」
朋也(ともや)「そうだといいんですけどね…」
早苗(さなえ)「大丈夫(だいじょうぶ)ですよっ」
朋也(ともや)(ああ、今週(こんしゅう)が終(お)わってしまう…)
翌日(よくじつ)も、話(はなし)を切(き)り出(だ)せないまま、やきもきした時間(じかん)を過(す)ごしていた。
秋生(あきお)「おい、小僧(こぞう)!」
不意打(ふいう)ちのように背後(はいご)から呼(よ)ばれる。
朋也(ともや)(びっくりした…)
朋也(ともや)「なんだよ…」
冷静(れいせい)を装(よそお)って返(かえ)す。
秋生(あきお)「付(つ)き合(あ)え」
朋也(ともや)「なぁ、オッサン。店(みせ)のほうはいいのかよ」
秋生(あきお)「こんな時間(じかん)に客(きゃく)なんてこねぇよ」
秋生(あきお)「それに来(き)たら、ここから見(み)える」
朋也(ともや)「そっかよ…」
秋生(あきお)「おうよ」
秋生(あきお)「こいっ」
オッサンがバットを構(かま)える。
俺(おれ)がピッチャーだった。
朋也(ともや)「いくぞ、オッサン」
秋生(あきお)「思(おも)いきりこいよな。この界隈(かいわい)じゃ、パンを焼(や)くソーサと呼(よ)ばれた男(おとこ)だぜ」
軽(かる)く、一球(いっきゅう)投(な)げてみる。
オッサンはそのスローボールを見逃(みのが)した。
秋生(あきお)「てめぇ、なめてんのか」
朋也(ともや)「わかった、もう少(すこ)し真剣(しんけん)に投(な)げるよ」
ボールを受(う)け取(と)る。
そもそも肩(かた)があがらないから、上投(うえな)げはできない。
サイドスローなら、肘(ひじ)の力(ちから)だけでなんとか投(な)げられる。
振(ふ)りかぶり、二球目(にきゅうめ)を投(な)げた。
秋生(あきお)「ちょこざいわああぁっ!」
カィーーーーーーーーン!
大飛球(だいひきゅう)。
振(ふ)り返(かえ)っても、どこに飛(と)んでいったかわからない。
………。
……。
…ガシャーーン!
朋也(ともや)「なんか聞(き)こえたな…」
秋生(あきお)「気(き)のせいだろ。さ、仕事(しごと)だ」
朋也(ともや)「こらこら、あんたが割(わ)ったんだろっ!」
秋生(あきお)「何(なに)が悲(かな)しくて、こんな歳(とし)にもなって、窓(まど)ガラスを特大(とくだい)ホームランで割(わ)っちゃいました、ごめんなさい…」
秋生(あきお)「なんて謝(あやま)らにゃならないんだよっ!」
朋也(ともや)「事実(じじつ)だろっ!
いけよっ!」
秋生(あきお)「おまえひとりでいけ。おまえの若(わか)さなら、まだ恥(は)ずかしくねぇだろ」
朋也(ともや)「だから、割(わ)ったのはあんただろっ!」
秋生(あきお)「行(い)ってくれたら今(いま)のホームランはなかったことにしてやろう。まだ0-0だ」
朋也(ともや)「試合(しあい)なんかしてねぇよっ」
秋生(あきお)「ちっ…」
秋生(あきお)「いくしかないのか…」
朋也(ともや)「当然(とうぜん)だろ、馬鹿(ばか)」
グローブを手(て)に填(は)めたままの俺(おれ)と、バットを肩(かた)に載(の)せて歩(ある)くオッサン。
朋也(ともや)(いい歳(とし)こいて…アホなふたりだ…)
秋生(あきお)「そうだ、おまえ」
朋也(ともや)「あん?」
秋生(あきお)「今月分(こんげつぶん)の給料(きゅうりょう)…100円(えん)上乗(うわの)せしておいてやろう」
朋也(ともや)「そりゃ、どうも」
100円(えん)では嬉(うれ)しくもないが、一応(いちおう)礼(れい)を言(い)っておく。
秋生(あきお)「だからな、おまえ…」
朋也(ともや)「ああ」
秋生(あきお)「ひとりで行(い)ってくれ!」
だっ!と逃(に)げ出(だ)す。
朋也(ともや)「こらっ!
小学生(しょうがくせい)か、あんたはっ!」
服(ふく)の裾(すそ)を掴(つか)んで、引(ひ)き戻(もど)す。
秋生(あきお)「冗談(じょうだん)だ、馬鹿(ばか)」
朋也(ともや)「マジで逃(に)げようとしたじゃないか、今(いま)」
秋生(あきお)「くそぅ、200円(えん)だったか」
だから、そういう問題(もんだい)じゃない。
前方(ぜんぽう)にまばらだったけど、人(ひと)の集(あつ)まりが見(み)えた。
朋也(ともや)「ああ、あそこだな。近所(きんじょ)の人(ひと)たちが集(あつ)まってるぜ」
秋生(あきお)「マジか…とんでもない醜態晒(しゅうたいさら)すことになるな…」
朋也(ともや)「自業自得(じごうじとく)だろ」
秋生(あきお)「仕方(しかた)ねぇな…」
秋生(あきお)「ちぃーっす」
挨拶(あいさつ)と共(とも)に、その中(なか)に割(わ)って入(はい)る。
主婦(しゅふ)「あら、古河(ふるかわ)さん」
秋生(あきお)「おぅ、悪(わる)い悪(わる)い。それ打(う)ったの、俺(おれ)なんだ」
主婦(しゅふ)「相変(あいか)わらず、やんちゃですね、古河(ふるかわ)さんは」
秋生(あきお)「違(ちが)う、こいつが、あんちゃんの特大(とくだい)ホームラン見(み)たいよぅってせがむんだ」
朋也(ともや)「誘(さそ)ったのは、あんただろっ」
主婦(しゅふ)「ふふふ…」
主婦(しゅふ)「大丈夫(だいじょうぶ)、わかってるわよ」
おばさんは笑(わら)って俺(おれ)に言(い)った。
結局(けっきょく)、みんな知(し)っているのだ。オッサンの人柄(ひとがら)を。
だから、誰(だれ)ひとりとして非難(ひなん)しようとしない。笑(わら)い声(ごえ)だけが、ずっと続(つづ)いていた。
俺(おれ)の前(まえ)では、俺以上(おれいじょう)に子供(こども)で、言動(げんどう)も乱暴(らんぼう)で、なんの取(と)り柄(え)もないような人(ひと)だったけど…
それでも、そんな光景(こうけい)を見(み)せられたら俺(おれ)にだってわかる。
やっぱり、早苗(さなえ)さんが選(えら)んだこの人(ひと)は、いい人(ひと)なのだと。
取(と)り柄(え)はないかもしれないけど、周(まわ)りに笑(わら)いを絶(た)やさずいてくれる人(ひと)。
それは、何(なに)よりもの取(と)り柄(え)なのかもしれない。
笑(わら)っていられれば、そのとき人(ひと)は、幸(しあわ)せなのだと思(おも)うから。
なら、この人(ひと)は…
人(ひと)を幸(しあわ)せにする力(ちから)があるのだ。
西日(にしび)の中(なか)、帰路(きろ)についていた。
朋也(ともや)「俺(おれ)もさ…」
秋生(あきお)「あん?」
朋也(ともや)「人(ひと)を笑(わら)わせてみたい」
秋生(あきお)「おぅ、くすぐってやれ」
朋也(ともや)「いや、そういう意味(いみ)じゃなくて…」
朋也(ともや)「オッサンみたいにだよ」
秋生(あきお)「あん?
俺(おれ)、んなことしてたか?」
朋也(ともや)「オッサンは渚(なぎさ)や早苗(さなえ)さんだけじゃなくて、近所(きんじょ)のひとたち、みんな笑(わら)わせてるじゃないか」
秋生(あきお)「なんだよ、そりゃ…俺(おれ)がアホみたいじゃねぇかよっ」
朋也(ともや)「いや、違(ちが)うよ。きっと、いい意味(いみ)でだよ」
秋生(あきお)「ふん、わかんねぇよ、自分(じぶん)じゃ」
朋也(ともや)「だから、俺(おれ)もそうしてみたいんだ」
朋也(ともや)「自分(じぶん)の力(ちから)だけで、笑(わら)わせてみたい」
朋也(ともや)「大切(たいせつ)な人(ひと)…渚(なぎさ)を」
秋生(あきお)「………」
朋也(ともや)「連(つ)れていっていいか、あいつを」
秋生(あきお)「どこへだよ…」
朋也(ともや)「この近(ちか)くでアパート借(か)りて、俺(おれ)、独(ひと)り暮(く)らし始(はじ)めようと思(おも)ってるんだ」
朋也(ともや)「そこへ」
秋生(あきお)「んな金(かね)、あるのかよ」
朋也(ともや)「新(あたら)しい仕事(しごと)の当(あ)てもあるんだ。そこで、がむしゃらに働(はたら)いて、稼(かせ)ぐ」
朋也(ともや)「そうやって、自分(じぶん)ひとりの力(ちから)で、渚(なぎさ)を笑(わら)わせたい」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)は…」
秋生(あきお)「あいつは、なんて言(い)ってんだよ…」
朋也(ともや)「一緒(いっしょ)にいくって、そう言(い)ってくれてる」
秋生(あきお)「そっか…」
秋生(あきお)「………」
しばらく沈黙(ちんもく)が続(つづ)いた。
オッサンは何(なに)を考(かんが)えているのだろうか。
秋生(あきお)「前(まえ)に話(はな)しただろう、俺(おれ)たちがパン屋(や)を始(はじ)めた理由(りゆう)」
朋也(ともや)「ああ…」
秋生(あきお)「あいつは自分(じぶん)の小(ちい)さな体(からだ)で、精一杯(せいいっぱい)、訴(うった)えたんだ」
秋生(あきお)「そばに居(い)てくれって」
秋生(あきお)「だから俺(おれ)たちは、あいつのそばに居(い)ることにしたんだ」
朋也(ともや)「………」
秋生(あきお)「でもな、あの日(ひ)から随分(ずいぶん)と時間(じかん)が経(た)った」
秋生(あきお)「もうあいつは、あの日(ひ)のような子供(こども)じゃねぇ」
秋生(あきお)「自分(じぶん)の意志(いし)を言葉(ことば)にして、ちゃんと伝(つた)えられる」
秋生(あきお)「そのあいつが、今度(こんど)はおまえと一緒(いっしょ)に居(い)たいって言(い)うんなら…」
秋生(あきお)「俺(おれ)には何(なに)も言(い)えねぇよ…」
諦(あきら)めたように、ため息(いき)をついた。
こんなにもあっさりと認(みと)めてもらえるなんて、思(おも)ってもみなかった。
でも、それは…誰(だれ)よりも渚(なぎさ)のことがわかっていたからだと思(おも)う。
自分(じぶん)の娘(むすめ)のために、ずっと生(い)きてきたからだと…そう思(おも)う。
秋生(あきお)「いいか」
秋生(あきお)「週(しゅう)に一度(いちど)はあいつとふたりで家(いえ)に顔(かお)を出(だ)すこと」
秋生(あきお)「そして、またあいつの具合(ぐあい)が悪(わる)くなったら、早苗(さなえ)を呼(よ)ぶこと」
秋生(あきお)「この二点(にてん)を守(まも)れ」
朋也(ともや)「ああ、わかった」
秋生(あきお)「後(あと)は、好(す)きにしろ」
言(い)って、オッサンは俺(おれ)を置(お)いていくようにして先(さき)を急(いそ)いだ。
朋也(ともや)「………」
その大(おお)きな背中(せなか)に向(む)かって…
朋也(ともや)「俺(おれ)、あいつを笑(わら)わせ続(つづ)けるからっ」
そう誓(ちか)った。
あんたがこれまでそうしてきたように。
今度(こんど)は俺(おれ)が。
秋生(あきお)「ああ、そうしてやってくれ」
バットが大(おお)きく揺(ゆ)れた。
店(みせ)の前(まえ)に早苗(さなえ)さんが立(た)っていた。
早苗(さなえ)「おふたりとも、お店(みせ)すっぽかしてどこ行(い)ってたんですか?」
秋生(あきお)「はい。こいつが、野球(やきゅう)しよう、って言(い)い出(だ)しました」
どんな大人(おとな)だ、あんた…。
秋生(あきお)「それで、やっほーぅ!俺(おれ)、バッターね!とかはしゃぎまくってよ…」
秋生(あきお)「おいおい、ガキじゃないんだから、フルスイングすんなよって、たしなめたのに…」
秋生(あきお)「ちょこざいわぁぁぁー!とか叫(さけ)びながら、大振(おおぶ)りしやがってよ…」
秋生(あきお)「それで窓(まど)ガラス割(わ)って、なにやってたんだ俺(おれ)…ってブルーになってたのはどこのどいつだ、あん?」
朋也(ともや)「全部(ぜんぶ)あんただよ」
秋生(あきお)「俺(おれ)がそんな子供(こども)みてぇなことするかよ!」
早苗(さなえ)「ごめんなさいね、朋也(ともや)さん」
朋也(ともや)「すべて見透(みす)かされてるよ」
秋生(あきお)「なんでだよっ、こいつのほうが年下(としした)なのに、どうしていい歳(とし)こいた俺(おれ)だと思(おも)うんだぁぁー!」
早苗(さなえ)「毎日(まいにち)プラモデル作(つく)ったり、三角(さんかく)ベースしてたらわかります」
秋生(あきお)「ぐわーっ!
ガキかよ、俺(おれ)はぁぁーっっ!」
頭(あたま)を抱(かか)えて、転(ころ)げ回(まわ)る。
早苗(さなえ)「それに長(なが)い付(つ)き合(あ)いですからね」
秋生(あきお)「ちっ…明日(あした)から趣味(しゅみ)はチェスだ」
早苗(さなえ)「やり方(かた)知(し)ってるんですか?」
秋生(あきお)「知(し)らねぇが、目(め)の前(まえ)に並(なら)べてうんうん唸(うな)ってれば、様(さま)になるだろ」
早苗(さなえ)「すぐに飽(あ)きそうですね」
秋生(あきお)「俺(おれ)は形(かたち)から入(はい)るんだよぉぉーっ!」
こんな人(ひと)を今(いま)さっきまで尊敬(そんけい)していたのかと思(おも)うと、鬱(うつ)になる。
早苗(さなえ)「もう暗(くら)いですから、お店(みせ)、閉(し)めましょうか」
秋生(あきお)「そうだな、今日(きょう)はゲームセットだ」
秋生(あきお)「ちなみに俺(おれ)のホームランはカウントされてるから、てめぇの負(ま)けだぞ」
秋生(あきお)「泣(な)きながら帰(かえ)れ、負(ま)け犬(いぬ)がっ」
秋生(あきお)「つーわけで、俺(おれ)はシャワーを浴(あ)びるぞ。汗(あせ)だくで気持(きも)ち悪(あく)ぃ」
早苗(さなえ)「はい」
早苗(さなえ)「お湯(ゆ)は張(は)らなくていいですか?」
秋生(あきお)「こんな暑(あつ)い日(ひ)に湯(ゆ)になんて浸(つ)かってられるかっ、溶(と)けるだろっ」
早苗(さなえ)「浸(つ)かったほうが疲(つか)れ、とれますよ?」
秋生(あきお)「いいっつってんだよっ」
オッサンが店(みせ)の中(なか)に入(はい)っていく。
早苗(さなえ)「はいはい。着替(きが)え持(も)っていきますね」
朋也(ともや)「あ、早苗(さなえ)さん」
その後(あと)に続(つづ)こうとした早苗(さなえ)さんを引(ひ)き留(と)める。
早苗(さなえ)「はい?」
朋也(ともや)「言(い)いましたよ、俺(おれ)」
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)とのことですか?」
朋也(ともや)「はい」
早苗(さなえ)「どうでしたか」
朋也(ともや)「承諾(しょうだく)、得(う)られました」
早苗(さなえ)「そうですか。良(よ)かったですね」
朋也(ともや)「ええ」
朋也(ともや)「予定通(よていどお)り、今月末(こんげつすえ)には家(いえ)を出(で)ます」
早苗(さなえ)「はい」
0
seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:43:24
がんばれるなら、がんばるべきなんです。
進めるなら、前に進むべきなんです。
clannad渚线剧本注音完成(rc版发布)
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2009-06-11 10:04
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�ظ���clannad��߾籾ע��ƻ���һ��Ŀ�����У�
那啥…手机的问题……悲剧的手机………
其实就是今天生日列表偶见海鸥君…
生日快乐…
注音计划完成这么多了呢…真是辛苦了…
此码无解XD
话说便当高考完了呢…
不知考的如何…是否如愿?
Leaves 最后编辑于 2009-06-11 12:25:06
吾輩は猫である...
当你凝视深渊的时候,深渊也在凝视着你...
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2009-06-11 11:43
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回复:clannad渚线剧本注音计划(一周目进行中)
LEAVES君..你的暗号太难解了..(掩面
東方求聞史記幻想郷縁起!
鐘楼は何処にあるか。日々は穏やかに…あの瞬間がやってくるまで。
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seagull
2009-06-11 13:09
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回复 82F Leaves 的帖子
谢谢,Leaves。
这几天忙一些其他的事,没有更新,下周还有各种考试,然后还有实训相关的事情。
不过时间如果找的话,总会有的。这个坑我一定会填完,不过这个学期我看是来不及了。
がんばれるなら、がんばるべきなんです。
進めるなら、前に進むべきなんです。
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seagull
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只看楼主
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回复: clannad渚线剧本注音计划(一周目进行中)
5月5日
(
水
)
5月(がつ)の連休(れんきゅう)、その最後(さいご)の日(ひ)に引(ひ)っ越(こ)しをした。
秋生(あきお)「てめぇ、免許(めんきょ)を取(と)れ」
軽(けい)トラックから降(お)りて、オッサンが開口一番(かいこういちばん)そう言(い)った。
朋也(ともや)「無理言(むりい)うな。金(かね)がねぇよ」
秋生(あきお)「ふん、まぁ、これが最後(さいご)だぞ。てめぇの世話(せわ)を焼(や)くのは」
朋也(ともや)「わかってるよ、オッサン。大丈夫(だいじょうぶ)だ」
秋生(あきお)「俺(おれ)は仕事(しごと)に戻(もど)る。こいつはまた夜(よる)に取(と)りにくる」
朋也(ともや)「ああ。世話(せわ)んなったな」
秋生(あきお)「ちっ、いいなぁ…同棲生活(どうせいせいかつ)かよ…」
呟(つぶや)きながら、去(さ)っていった。
朋也(ともや)「自分(じぶん)も、早苗(さなえ)さんとふたりきりじゃんか」
その背(せ)を見送(みおく)る。
朋也(ともや)「さて、と…」
軽(けい)トラと向(む)き合(あ)う。荷台(にだい)に載(の)る荷物(にもつ)は少(すく)なかった。
めぼしいものと言(い)えば、テレビにタンス、布団(ふとん)にちゃぶ台(だい)ぐらいのものだった。
全部(ぜんぶ)、古河家(ふるかわけ)の物置(ものおき)に仕舞(しまい)われていたお古(ふる)だ。
冷蔵庫(れいぞうこ)は小(ちい)さいのが、部屋(へや)に備(そな)えつけられていた。
洗濯(せんたく)は、アパートのすぐ正面(しょうめん)にあるコインランドリーを使(つか)うことに決(き)めている。
それでも十分(じゅうぶん)だった。それ以上(いじょう)は、単(たん)なる贅沢(ぜいたく)でしかないと思(おも)った。
とりあえず布団(ふとん)を抱(かか)えて、部屋(へや)へと向(む)かう。
そこでは、渚(なぎさ)がひとりで待(ま)っていた。
まだ何(なに)もなかったけど…部屋(へや)に立(た)つ渚(なぎさ)を見(み)ただけで、俺(おれ)の胸(むね)は高鳴(たかな)ってしまう。
ふたりだけの生活(せいかつ)が本当(ほんとう)に始(はじ)まる。
それを期待(きたい)と不安(ふあん)と共(とも)に実感(じっかん)していた。
渚(なぎさ)「あ、荷物(にもつ)届(とど)きましたか」
渚(なぎさ)から先(さき)に口(くち)を開(ひら)いていた。
朋也(ともや)「ああ、悪(わる)いけど、ちょっとどいてくれ」
つっかけを脱(ぬ)いで、上(あ)がる。その際(さい)、布団(ふとん)の端(はし)が壁(かべ)に擦(す)れて、脆(もろ)い表面(ひょうめん)を削(けず)った。
朋也(ともや)「うわっ、俺(おれ)、いきなり、部屋(へや)を壊(こわ)してるよ…」
渚(なぎさ)「あの、手伝(てつだ)います」
朋也(ともや)「いや、こういうのは男(おとこ)の仕事(しごと)なんだ。見(み)ててくれ」
渚(なぎさ)「でも…」
朋也(ともや)「荷物(にもつ)も少(すく)ないしさ」
朋也(ともや)「後(あと)で、茶(ちゃ)いれてくれたらそれでいいよ」
渚(なぎさ)「でも…」
朋也(ともや)「大丈夫(だいじょうぶ)だっての」
一時間(いちじかん)で、掃除(そうじ)まで済(す)んでしまった。
小(ちい)さなちゃぶ台(だい)に向(む)かい合(あ)って座(すわ)るふたり。
ずずーっと、渚(なぎさ)がいれてくれた茶(ちゃ)をすする。
朋也(ともや)「………」
ずずーっ。
渚(なぎさ)「………」
ずずーっ。
渚(なぎさ)「えーっと…」
渚(なぎさ)「…こういう時(とき)はなんて言(い)うんでしょうか」
朋也(ともや)「あん?」
渚(なぎさ)「ふたりでの生活(せいかつ)のスタートです」
朋也(ともや)「そうだな」
渚(なぎさ)「なんて言(い)えばいいんでしょう」
渚(なぎさ)「スタートですから、よーい、どん、でしょうか」
朋也(ともや)「いや、それヘンだよ」
渚(なぎさ)「どうしてでしょうか」
朋也(ともや)「ゴールなんてないじゃん」
渚(なぎさ)「そう言(い)われてみると、そうです」
朋也(ともや)「お互(たが)いが助(たす)け合(あ)って暮(く)らしていくんだからさ…」
朋也(ともや)「たぶん、お願(ねが)いします、だよ」
渚(なぎさ)「あ…そうです。朋也(ともや)くん、賢(かしこ)いです」
朋也(ともや)「じゃ、やるか」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)「あ、ちょっと待(ま)ってください」
朋也(ともや)「なんだよ」
渚(なぎさ)「わたし、それと一緒(いっしょ)に誓(ちか)いを立(た)てたいと思(おも)います」
朋也(ともや)「誓(ちか)い?」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)が湯飲(ゆの)みを置(お)いて、両手(りょうて)を胸(むね)の前(まえ)で合(あ)わせた。
渚(なぎさ)「わたし、古河渚(ふるかわなぎさ)は…」
渚(なぎさ)「もう泣(な)きません。どんなに辛(つら)くても、がんばって、乗(の)り越(こ)えていきます」
朋也(ともや)「いや、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「我慢(がまん)するのは、悲(かな)しい時(とき)だけでいいんだよ」
朋也(ともや)「嬉(うれ)しい時(とき)にさ、涙(なみだ)堪(た)えてたら、そっちに必死(ひっし)になってさ、喜(よろこ)びが減(へ)るだろ」
朋也(ともや)「そうは思(おも)わないか」
渚(なぎさ)「はい、そうです。きっとそうです」
渚(なぎさ)「わかりました」
渚(なぎさ)「それでは、もう一度(いちど)」
朋也(ともや)「ああ」
渚(なぎさ)「わたし、古河渚(ふるかわなぎさ)は…」
渚(なぎさ)「もう泣(な)きません。どんなに辛(つら)くても、がんばって、乗(の)り越(こ)えていきます」
渚(なぎさ)「でもうれしい時(とき)だけは、泣(な)いてしまうかもしれません」
渚(なぎさ)「そんなわたしですが…」
渚(なぎさ)「お願(ねが)いします」
手(て)を畳(たたみ)につけて、お辞儀(じぎ)をした。
朋也(ともや)「こちらこそ、お願(ねが)いします」
俺(おれ)も頭(あたま)を下(さ)げる。
渚(なぎさ)「えへへ」
渚(なぎさ)が笑(わら)う。
朋也(ともや)「よし、明(あか)るいうちにさ、近所(きんじょ)に挨拶(あいさつ)に回(まわ)ろうぜ」
渚(なぎさ)「はい」
夕飯(ゆうはん)はふたりで作(つく)った。
献立(こんだて)は焼(や)き魚(ざかな)、大根(だいこん)のお浸(ひた)し、ひじきの煮物(にもの)、それにご飯(はん)とみそ汁(しる)だけという質素(しっそ)なものだった。
それでも、できた時(とき)にはふたりしてものすごく喜(よろこ)び、そして食(た)べた時(とき)はものすごく美味(おい)しく感(かん)じた。
ふたりで、片(かた)づけ、しばらくテレビを見(み)て過(す)ごす。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、明日早(あしたはや)いです」
朋也(ともや)「ああ、早(はや)いよ」
渚(なぎさ)「そろそろお風呂入(ふろはい)って、休(やす)んだほうがいいと思(おも)います」
時間(じかん)は10時(じ)。
朋也(ともや)「そういや、おまえ、11時(じ)に寝(ね)るんだったな」
渚(なぎさ)「あ、いえ…わたしが寝(ね)たいから急(せ)かしているわけではないです」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんの体(からだ)のことを考(かんが)えてです」
朋也(ともや)「ああ…ありがと。じゃ、そうするよ」
渚(なぎさ)「はい、そうしてください」
キッチン兼用(けんよう)の狭(せま)い通路(つうろ)に立(た)ち、カーテンを引(ひ)く。
そもそもこのカーテンさえなかったのだが、さすがに仕切(しき)りは必要(ひつよう)だということで後(あと)から取(と)りつけたものだった。
小(ちい)さなかごの上(うえ)に服(ふく)を脱(ぬ)ぎ捨(す)てて、浴室(よくしつ)に入(はい)った。
シャー…
朋也(ともや)(すんげぇ出(で)が悪(わる)い…)
蛇口(じゃぐち)をひねる。
朋也(ともや)(アチッ…)
朋也(ともや)(温度調整(おんどちょうせい)も極端(きょくたん)だな…)
ま、これも慣(な)れればなんとも思(おも)わなくなるのだろう。
渚(なぎさ)と兼用(けんよう)のシャンプーで頭(あたま)を洗(あら)う。
朋也(ともや)「お先(さき)」
渚(なぎさ)「はい。それではわたしも入(はい)ってきます」
朋也(ともや)「ああ」
入(い)れ代(か)わり、渚(なぎさ)が立(た)ち上(あ)がり、カーテンをくぐっていった。
先(さき)にドライヤーを使(つか)っておこう。
コンセントを差(さ)して、スイッチを入(い)れようとした時(とき)…
シュ…
布(めの)の擦(す)れる音(おと)がした。
俺(おれ)はカーテンを振(ふ)り返(かえ)る。
朋也(ともや)(よく考(かんが)えたら…これって、かつてなくアレな状況(じょうきょう)じゃないか…)
カーテンの下(した)には渚(なぎさ)の素足(すあし)が見(み)えている。
そこに今(いま)、スカートが落(お)ちてきた。
朋也(ともや)(ああ…これだけのことで興奮(こうふん)するのも、そういうことに疎(うと)いからだろうな、俺(おれ)たち…)
でも、これは同棲生活(どうせいせいかつ)だ。
渚(なぎさ)だって、そういった覚悟(かくご)もしてるに違(ちが)いない。
いくら、疎(うと)くても…。
朋也(ともや)(ああ、何(なに)考(かんが)えてるんだ、俺(おれ)はっ)
カーテンから目(め)を逸(そ)らす。
ふたりで頑張(がんば)ろうと決(き)めて始(はじ)めたことなのに、初日(しょにち)から、こんな欲(よく)も抑(おさ)えられないでどうする。
………。
パタン、と戸(と)が閉(し)まる音(おと)がした。
朋也(ともや)(しかし…)
朋也(ともや)(男(おとこ)とは溜(た)まっていくものだからな…我慢(がまん)にも限界(げんかい)があるよな…)
もう一度(いちど)、カーテンに目(め)を向(む)ける。
自分を落ち着かせる
朋也(ともや)(落(お)ち着(つ)け、俺(おれ)…)
朋也(ともや)(まだ仕事(しごと)の初日(しょにち)も迎(むか)えてないってのに…)
朋也(ともや)(同棲生活(どうせいせいかつ)が始(はじ)まった途端(とたん)これじゃ、オッサンや早苗(さなえ)さんに申(もう)し訳(わけ)が立(た)たないだろ…)
渚(なぎさ)の自立(じりつ)を許(ゆる)してくれたふたりの顔(かお)を思(おも)い浮(う)かべると…俺(おれ)は自然(しぜん)と落(お)ち着(つ)いていた。
ふたりの思(おも)いを踏(ふ)みにじること…それだけはできなかった。
朋也(ともや)(もっと苦労(くろう)を越(こ)えてからだ…)
朋也(ともや)(じゃなきゃ、意味(いみ)がない)
そう自分(じぶん)に言(い)い聞(き)かせた。
渚(なぎさ)「いいお湯(ゆ)でした」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)、おまえ、可愛(かわい)い」
渚(なぎさ)「あ、ありがとうございます」
渚(なぎさ)「でも、風呂上(ふろあ)がりにいきなり言(い)われると、なんかヘンな気分(きぶん)です」
朋也(ともや)「我慢(がまん)してたんだ。言(い)わせてくれ」
渚(なぎさ)「はい…別(べつ)に嫌(いや)だったわけではないです」
これぐらいは許(ゆる)されるだろうと、俺(おれ)は言葉責(ことばせ)めにした。
でも、本当(ほんとう)に昔(むかし)よりも可愛(かわい)くなった気(き)がする。
それは、渚(なぎさ)が変(か)わったのか…
それとも、俺(おれ)が渚(なぎさ)を昔以上(むかしいじょう)に好(す)きになっているのか…
よくわからなかった。
体(からだ)を横(よこ)にしてからも眠気(ねむけ)は訪(おとず)れず、ずっと見慣(みな)れない天井(てんじょう)を眺(なが)めていた。
渚(なぎさ)のほうも、寝(ね)つけないようで、一向(いっこう)に寝息(ねいき)は聞(き)こえてこない。
朋也(ともや)(………)
ふと、今(いま)のふたりが滑稽(こっけい)に思(おも)えた。
今日(きょう)から始(はじ)まる暮(く)らしが、単(たん)なるままごとのような気(き)がして。
ただ、渚(なぎさ)を自分(じぶん)の力(ちから)で幸(しあわ)せにしたいという一念(いちねん)で、ここまでやってきたけど…
これから先(さき)、たくさんの困難(こんなん)が待(ま)ち受(う)けているだろう。
きっと現実(げんじつ)はそんなに甘(あま)くはない。
その現実(げんじつ)に対(たい)して俺(おれ)たちはあまりにも子供(こども)で、簡単(かんたん)に折(お)れてしまいそうにも思(おも)えた。
それを越(こ)えないと本当(ほんとう)の強(つよ)さなんて、わからない。
今(いま)は、自分(じぶん)たちで頑張(がんば)っている気(き)になっているだけだ。
オッサンや早苗(さなえ)さんも同(おな)じように考(かんが)えているのかもしれない。
若気(わかげ)の至(いた)りのひとつだと。
やりたいならやってみればいい。
自分(じぶん)たちの手(て)の届(とど)くところで。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)、起(お)きてるか」
渚(なぎさ)「はい、起(お)きてます」
朋也(ともや)「俺(おれ)はさ、もっと強(つよ)くなりたい」
渚(なぎさ)「わたしもです」
朋也(ともや)「だよな…」
朋也(ともや)「だから、ふたりで頑張(がんば)ろうな」
朋也(ともや)「俺(おれ)も、明日(あした)からはオッサンも早苗(さなえ)さんもいない、甘(あま)えの利(き)かない新(あたら)しい職場(しょくば)で働(はたら)くことになる」
朋也(ともや)「きっと、予想以上(よそういじょう)に辛(つら)いんだと思(おも)う」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「おまえも今(いま)、頑張(がんば)ってる」
渚(なぎさ)「はい…」
朋也(ともや)「そうして、ふたりして、一年(いちねん)頑張(がんば)ったらさ…」
朋也(ともや)「きっとさ、何(なに)にも負(ま)けないぐらい強(つよ)くなってるよ、俺(おれ)たち」
渚(なぎさ)「わたしもそう思(おも)います」
朋也(ともや)「おまえ、誓(ちか)いを立(た)てたもんな」
渚(なぎさ)「はい、立(た)てました」
朋也(ともや)「頑張(がんば)ろうな」
渚(なぎさ)「はい」
俺(おれ)は並(なら)んだ布団(ふとん)の中(なか)で、渚(なぎさ)の手(て)を探(さぐ)った。
見(み)つけると、それを握(にぎ)った。
人(ひと)の温(ぬく)もりを感(かん)じながら、俺(おれ)は眠(ねむ)った。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:44:37
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5月6日
(
木
)
仕事(しごと)は8時(じ)からだった。まだ一度(いちど)も行(い)ったことのない事務所(じむしょ)に向(む)かわなければならない。
だから余裕(よゆう)を持(も)って、6時半(じはん)に起(お)きた。
ひとり、みそ汁(しる)を温(あたた)めていると…
渚(なぎさ)「おはようございます、朋也(ともや)くん」
渚(なぎさ)が起(お)き出(だ)してきた。
朋也(ともや)「起(お)こしちまったか、悪(わる)いな」
渚(なぎさ)「いえ、代(か)わります。朋也(ともや)くんは支度(したく)をしていてください」
朋也(ともや)「馬鹿(ばか)、寝(ね)てろよ。まだこんな時間(じかん)だぞ。授業中(じゅぎょうちゅう)に居眠(いねむ)りするぞ」
渚(なぎさ)「大丈夫(だいじょうぶ)です。代(か)わってください」
朋也(ともや)「寝(ね)てろっての。こっちはそんなに手間(てま)じゃないから」
渚(なぎさ)「でも、そういうことはわたしがしたいです」
渚(なぎさ)「お願(ねが)いします」
朋也(ともや)「………」
朋也(ともや)「わかったよ…」
喧嘩(けんか)はしないふたりだったけど、相手(あいて)を思(おも)いやるばかりに、こうした譲(ゆず)り合(あ)いが絶(た)えないだろう。
朋也(ともや)(こいつ、言(い)っても聞(き)かない子(こ)だからな…)
台所(だいどころ)に立(た)つ渚(なぎさ)の後(うし)ろ姿(すがた)を眺(なが)めながら、そんなことを考(かんが)えていた。
朋也(ともや)「いいか、まだ早(はや)いんだから、寝直(ねなお)せよ」
渚(なぎさ)「はい、わかりました」
朋也(ともや)「かといって、寝過(ねす)ぎるな。ちゃんと目覚(めざ)ましかけて、遅刻(ちこく)しないようにな」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「じゃ、いってくる」
渚(なぎさ)「いってらっしゃいです」
朋也(ともや)「おはようございます」
新(あたら)しい職場(しょくば)の戸(と)を開(ひら)ける。
中(なか)では、3人(にん)の作業服(さぎょうふく)を着(き)た男(おとこ)がだべっていた。
芳野(よしの)「来(き)たか」
芳野(よしの)さんだけが、俺(おれ)に気(き)づいてくれた。
芳野(よしの)「すぐにこれに着替(きが)えろ。ロッカーの裏(うら)だ」
指(さ)さす先(さき)に、パーティション代(か)わりにロッカーの背(せ)が並(なら)んでいた。
俺(おれ)はその後(うし)ろに回(まわ)り込(こ)み、渡(わた)された服(ふく)に着替(きが)える。
以前(いぜん)に誰(だれ)かが使(つか)っていたものなのだろう。至(いた)るところが煤(すす)に汚(よご)れた作業着(さぎょうぎ)だった。
芳野(よしの)さんの元(もと)に戻(もど)るが、同僚(どうりょう)たちとの会話(かいわ)に夢中(むちゅう)だった。
すでに出来上(できあ)がっている空気(くうき)に、自分(じぶん)がそぐわない。
居心地悪(いごこちわる)く、待(ま)ち続(つづ)ける。
そこへ、一際(ひときわ)くたびれた作業着姿(さぎょうぎすがた)の中年男性(ちゅうねんだんせい)が現(あらわ)れた。
一目(いちもく)でわかる。ここで一番偉(いちばんえら)い人(ひと)だ。
芳野(よしの)さんは、その人(ひと)の前(まえ)まで俺(おれ)を連(つ)れていった。
親方(おやかた)「芳野(よしの)くん。その子(こ)だっけ、今日(きょう)から来(く)るって言(い)ってた」
芳野(よしの)「ええ、そうです。名前(なまえ)は…」
朋也(ともや)「岡崎(おかざき)っす」
芳野(よしの)「親方(おやかた)だ。ちゃんと挨拶(あいさつ)しろ」
親方(おやかた)「若(わか)いね。いくつだい」
朋也(ともや)「18っす」
親方(おやかた)「高校卒業(こうこうそつぎょう)したてか。そりゃ活(い)きがいいね」
親方(おやかた)「ま、最初(さいしょ)の数日(すうじつ)はキツいと思(おも)うけどさ、長(なが)く続(つづ)けたら慣(な)れるよ」
親方(おやかた)「無理(むり)しないように、頑張(がんば)ってよ」
朋也(ともや)「はい、頑張(がんば)ります」
親方(おやかた)「怪我(けが)だけは気(き)をつけてね」
その後(あと)、すぐにそれぞれの今日(きょう)の仕事場(しごとば)に向(む)かうことになる。
芳野(よしの)「いくか」
俺(おれ)は芳野(よしの)さんとコンビで仕事(しごと)をするようだった。
芳野(よしの)「変(か)わったな」
仕事場(しごとば)に向(む)かう車(くるま)の中(なか)、芳野(よしの)さんは前(まえ)を向(む)いたまま、そう言(い)った。
朋也(ともや)「え?
なにがですか?」
助手席(じょしゅせき)から訊(き)き返(かえ)す俺(おれ)。
芳野(よしの)「出会(であ)った時(とき)と、まるで別人(べつじん)のようだ」
朋也(ともや)「そうっすか…」
芳野(よしの)「ああ。あの時(とき)は、まんま子供(こども)だったものな」
朋也(ともや)「じゃ、今(いま)は、大人(おとな)に見(み)えますか」
芳野(よしの)「いや…」
芳野(よしの)「大人(おとな)になろうと懸命(けんめい)に足掻(あが)いてる子供(こども)に見(み)える」
朋也(ともや)「なんだ…結局子供(けっきょくこども)なんすね」
芳野(よしの)「でも、全然違(ぜんぜんちが)う」
朋也(ともや)「どう違(ちが)うんすか」
芳野(よしの)「真剣(しんけん)さが違(ちが)うだろ」
確(たし)かに…それは大(おお)きな違(ちが)いに思(おも)えた。
前(まえ)に進(すす)む気(き)もなければ、子供(こども)は子供(こども)のままだ。
芳野(よしの)「期待(きたい)してるぞ」
朋也(ともや)「はいっ」
芳野(よしの)「それと…一日(いちにち)で辞(や)めるのはやめてくれ。それやられると、鬱(うつ)になるからな」
朋也(ともや)「大丈夫(だいじょうぶ)っす。真剣(しんけん)ですから」
芳野(よしの)「よし。じゃ、いくか」
車(くるま)は停止(ていし)していた。
朋也(ともや)「はい」
同時(どうじ)にドアを開(あ)けた。
芳野(よしの)「今日(きょう)はこれの設置(せっち)だ」
芳野(よしの)「前(まえ)の手伝(てつだ)いとは違(ちが)うが、基本(きほん)は一緒(いっしょ)だ」
芳野(よしの)さんは、トラックの荷台(にだい)から一抱(ひとかか)えもある段(だん)ボールを降(お)ろした。
朋也(ともや)「なんすか、これ」
芳野(よしの)「街灯(がいとう)だ。型番(かたばん)は…っつってもわからないか」
芳野(よしの)「早(はや)く覚(おぼ)えろ。材料(ざいりょう)の確認(かくにん)も仕事(しごと)の一(ひと)つだ」
芳野(よしの)さんはそう言(い)って、段(だん)ボールを開(ひら)け始(はじ)めた。
俺(おれ)も何(なに)かをしようと思(おも)い、荷台(にだい)に駆(か)け寄(よ)った。たしか工具類(こうぐるい)をチェックするはず…。
芳野(よしの)「荷台(にだい)にメットがあるから、先(さき)にかぶれ。前(まえ)にも言(い)っただろ」
いきなり注意(ちゅうい)された。俺(おれ)は慌(あわ)ててメットをかぶった。
俺(おれ)はびっくりしていた。
前(まえ)にやった、半日(はんにち)だけの手伝(てつだ)いのときには何(なに)も言(い)われなかった。
ただ、ペンチを取(と)ってくれとか、ビスを出(だ)してくれなどの指示(しじ)しか来(こ)なかった。
芳野(よしの)「返事(へんじ)は?」
朋也(ともや)「は、はい」
芳野(よしの)「よし。荷台(にだい)にもう一本梯子(いっぽんはしご)、あるだろ。反対側(はんたいがわ)から立(た)てかけて登(のぼ)ってくれ」
俺(おれ)は急(いそ)いで指示(しじ)に従(したが)った。
芳野(よしの)「落(お)とすな。それと落(お)ちるな」
朋也(ともや)「…縁起(えんぎ)でもないこと、言(い)わないでください」
俺(おれ)は街灯(がいとう)を支(ささ)えている。仮止(かりど)めはしていたが回路(かいろ)を繋(つな)げる間(あいだ)、俺(おれ)が支(ささ)えていた。
芳野(よしの)「腕(うで)の力(ちから)で支(ささ)えるな。体重(たいじゅう)を掛(か)けろ。そっちの方(ほう)が安全(あんぜん)だ」
朋也(ともや)「………」
俺(おれ)は答(こた)えられなかった。街灯(がいとう)の支柱(しちゅう)に命綱(いのちづな)を通(とお)し、身体(しんたい)を後(うし)ろに反(そ)らすようにして街灯(がいとう)を支(ささ)えるとの説明(せつめい)は受(う)けた。
だが、できなかった。言(い)うのは簡単(かんたん)だが、ここは地上(ちじょう)ではない。
そもそも梯子(はしご)の上(うえ)で自分(じぶん)からバランスを崩(くず)せるか。地上(ちじょう)数(すう)メートルとはいえ、怖(こわ)いものは怖(こわ)い。
芳野(よしの)「いやでも覚(おぼ)えろ」
芳野(よしの)さんは簡単(かんたん)そうに言(い)った。
芳野(よしの)「よし、終(お)わり。放(はな)していいぞ」
俺(おれ)は街灯(がいとう)をそっと放(はな)した。やや前(まえ)のめりになって、固定(こてい)されていた。
芳野(よしの)「本止(ほんど)めするから見(み)ておけ」
朋也(ともや)「あ、それくらい俺(おれ)にやらせてくださいよ」
芳野(よしの)「止(や)めとけ。最初(さいしょ)は見(み)て覚(おぼ)えろ」
芳野(よしの)さんは怪訝(かいが)そうな顔(かお)をしていた。
朋也(ともや)「わかりますよ。それくらい」
いくらなんでもボルトの締(し)め方(かた)くらいはわかっている。
少(すこ)しでも仕事(しごと)をして、とにかく先(さき)に進(すす)みたかった。
芳野(よしの)「…じゃ、残(のこ)りを締(し)めてくれ。締(し)める順番(じゅんばん)は対角線(たいかくせん)。最後(さいご)に確認(かくにん)を忘(わす)れるなよ」
芳野(よしの)さんは梯子(はしご)を降(お)りていった。
俺(おれ)は言(い)われた通(とお)り、対角線(たいかくせん)にボルトを締(し)めて降(お)りていった。
芳野(よしの)さんの手際(てぎわ)には敵(かな)わないが、とにかく力一杯(ちからいっぱい)締(し)めたから問題(もんだい)ないだろう。
芳野(よしの)「終(お)わったか?」
朋也(ともや)「ええ」
芳野(よしの)「確認(かくにん)したか?」
朋也(ともや)「しましたけど、どういうことっすか?」
芳野(よしの)「最後(さいご)にもう一度(いちど)締(し)めたか?
ちゃんと止(と)まってるか、台座(だいざ)と平行(へいこう)になってるかな」
俺(おれ)と芳野(よしの)さんは再(ふたた)び梯子(はしご)を登(のぼ)った。
芳野(よしの)さんは慣(な)れた手(て)で、俺(おれ)の締(し)めたボルトを触(さわ)っていた。
その中(なか)のひとつに触(ふ)れたとき、スパナで叩(たた)いてから、おもむろに締(し)めた。
スパナは半回転(はんかいてん)もした。
朋也(ともや)「…嘘(うそ)だろ」
俺(おれ)は確(たし)かに力(ちから)の限(かぎ)り締(し)めたはずだった。
芳野(よしの)「ちゃんと締(し)まってなかったな」
朋也(ともや)「いや、でも…」
かん、と音(おと)が響(ひび)いた。メットの上(うえ)からスパナで殴(なぐ)られたのだ。
痛(いた)くはなかったが、頭(あたま)にじーんと響(ひび)き、目(め)の前(まえ)がちかちかする。
朋也(ともや)「………」
芳野(よしの)「だから訊(き)いただろ。本当(ほんとう)にわかってるかって」
確(たし)かに訊(き)かれた。俺(おれ)もそれくらいわかると言(い)った。
だが、結果(けっか)はこのザマだった。
芳野(よしの)「締(し)め方(かた)一(ひと)つにも技術(ぎじゅつ)があるんだ。おまえはできるって言(い)ったから任(まか)せた」
返(かえ)す言葉(ことば)もない。
芳野(よしの)「この仕事(しごと)は見(み)て覚(おぼ)える。真似(まね)る。そこから始(はじ)めるんだ」
芳野(よしの)「いいか。この仕事(しごと)は、間違(まちが)えたら終(お)わりなんだ」
芳野(よしの)「もし自分(じぶん)の設置(せっち)した街灯(がいとう)が落(お)ちたらどうする?」
多分(たぶん)、いや絶対(ぜったい)に嫌(いや)な気分(きぶん)になる。
芳野(よしの)「それに、もしその下(した)に自分(じぶん)の大事(だいじ)な人(ひと)がいたらどうする?」
落(お)ちてきた街灯(がいとう)の下(した)に大事(だいじ)な人(ひと)…。俺(おれ)の頭(あたま)に渚(なぎさ)の顔(かお)が浮(う)かんだ。
朋也(ともや)「絶対(ぜったい)に嫌(いや)です」
芳野(よしの)「だから確実(かくじつ)にするんだ。丁寧(ていねい)に、ひたすら丁寧(ていねい)にな」
朋也(ともや)「…はい」
芳野(よしの)「それさえ忘(わす)れなければ、今(いま)はいい」
朋也(ともや)「はい」
俺(おれ)は真剣(しんけん)に頭(あたま)を下(さ)げた。
芳野(よしの)「じゃ、次(つぎ)に行(い)くぞ」
朋也(ともや)「残(のこ)りはどのくらいですか?」
芳野(よしの)「そうだな、…あと四件(よんけん)だ」
朋也(ともや)「…げ」
俺(おれ)の悲鳴(ひめい)を聞(き)いて、芳野(よしの)さんは薄(うす)く笑(わら)った。
そして、一日(いちにち)の仕事(しごと)が終(お)わる。
事務所(じむしょ)から一歩出(いっぽで)たところで、それ以上(いじょう)歩(ある)けなくなった。
腰(こし)を下(お)ろし、壁(かべ)にもたれる。
全身(ぜんしん)が限界(げんかい)を超(こ)えた労働(ろうどう)に今(いま)なお悲鳴(ひめい)を上(あ)げ続(つづ)けている。
明日(あした)、起(お)きた時(とき)が恐(こわ)い。
どれほどの筋肉痛(きんにくつう)に襲(おそ)われるのだろうか、と。
しばらく休(やす)んでから、おぼつかない足取(あしど)りで家路(いえじ)を辿(たど)った。
朋也(ともや)「ただいま」
渚(なぎさ)「おかえりなさいです」
台所(だいどころ)に立(た)つ渚(なぎさ)を見(み)ると、それだけでいくらか回復(かいふく)した気分(きぶん)になる。
渚(なぎさ)「もうすぐ夕飯(ゆうはん)できます」
朋也(ともや)「手伝(てつだ)うよ」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、ものすごく疲(つか)れてます」
朋也(ともや)「疲(つか)れてるけど、おまえの顔(かお)見(み)たら、元気(げんき)になった」
渚(なぎさ)「ありがとうございます」
渚(なぎさ)「でも、そこで無理(むり)すると、明日(あした)に響(ひび)くと思(おも)います」
渚(なぎさ)「ですので、休(やす)んでいてください」
朋也(ともや)「手伝(てつだ)うぐらい、なんでもないんだけどな」
靴(くつ)を脱(ぬ)ぎ、渚(なぎさ)に近(ちか)づこうとしたところで、よろめく。
渚(なぎさ)のおかげで回復(かいふく)したのは気力(きりょく)だけで、体力(たいりょく)は底(そこ)をついたままだった。
渚(なぎさ)「どうしましたか?」
渚(なぎさ)が振(ふ)り返(かえ)って、俺(おれ)を不思議(ふしぎ)そうな目(め)で見(み)ていた。
朋也(ともや)「いや…」
朋也(ともや)「やっぱり、休(やす)んでおこうかな…」
渚(なぎさ)「はい」
その後(うし)ろをぶつからないように通(とお)り、部屋(へや)に入(はい)る。
腰(こし)を下(お)ろすと、体(からだ)中(なか)が痺(しび)れたように弛緩(しかん)し、そのままぶっ倒(たお)れそうになる。
精神力(せいしんりょく)で、渚(なぎさ)が夕飯(ゆうはん)を運(はこ)んでくるまで体(からだ)を起(お)こしていた。
朋也(ともや)「いただきます」
渚(なぎさ)「いただきます」
昨晩(さくばん)と同(おな)じように、質素(しっそ)な献立(こんだて)が並(なら)ぶ。
でも、疲(つか)れきった俺(おれ)には、ちょうどよかった。
肉(にく)や揚(あ)げ物(もの)だったら、喉(のど)を通(とお)らなかっただろう。
朋也(ともや)「帰(かえ)りに、買(か)い物(もの)してくるのか?」
渚(なぎさ)「いえ、ちゃんと帰(かえ)ってきて、着替(きが)えてから行(い)ってます」
朋也(ともや)「ああ、そうなのか」
想像(そうぞう)してみる。
主婦(しゅふ)に混(ま)じって、スーパーで生鮮食品(せいせんしょくひん)を買(か)い求(もと)める渚(なぎさ)の姿(すがた)を。
朋也(ともや)(いい…)
さらに気力(きりょく)+50。
…回復(かいふく)するのは気力(きりょく)ばかりだった。
渚(なぎさ)「あの、お仕事(しごと)のほうは、どうでしたか」
朋也(ともや)「ああ…肉体労働(にくたいろうどう)だから、しんどいことは確(たし)かだよ」
朋也(ともや)「でも、最初(さいしょ)だけだと思(おも)う。慣(な)れれば、もっと楽(らく)になるよ」
他(あだ)にも何(なに)か話(はな)せればよかったのだろうけど、初日(しょにち)の感想(かんそう)なんて疲(つか)れた以外(いがい)には何(なに)も浮(う)かばなかった。
渚(なぎさ)「そうですか」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、がんばってます」
朋也(ともや)「ああ」
渚(なぎさ)「なんだか、かっこいいです」
朋也(ともや)「今(いま)までは、格好悪(かっこうわる)かったみたいだな」
渚(なぎさ)「いえ、今(いま)まで以上(いじょう)に、という意味(いみ)です」
朋也(ともや)「いいよ、自分(じぶん)でもわかってるんだ」
朋也(ともや)「今(いま)までは、オッサンや早苗(さなえ)さんに甘(あま)えてたからな…格好(かっこう)いいわけがない」
朋也(ともや)「本当(ほんとう)の社会人(しゃかいじん)には、今日(きょう)なったんだと思(おも)う」
朋也(ともや)「自分(じぶん)でも実感(じっかん)してるよ」
渚(なぎさ)「では、今日(きょう)は社会人(しゃかいじん)になった記念日(きねんび)です」
朋也(ともや)「なんかくれるのか?」
渚(なぎさ)「なにか、欲(ほ)しいでしょうか」
朋也(ともや)「なんでも欲(ほ)しい」
渚(なぎさ)「でも、わたし、何(なに)も持(も)ってないです」
朋也(ともや)「形(かたち)があるものじゃなくてもいいんじゃないかな…」
渚(なぎさ)「ええと、言葉(ことば)でもいいですか」
いい
朋也(ともや)「ああ、言葉(ことば)だって、俺(おれ)はうれしいよ」
渚(なぎさ)「それでは…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、社会人(しゃかいじん)、おめでとうございます」
渚(なぎさ)「そして、がんばってください」
渚(なぎさ)「その…わたしのために」
………。
渚(なぎさ)がそんなことを言(い)ってくれるなんて思(おも)わなかった。
胸(むね)の奥底(おうそこ)がじわっと暖(あたた)かくなる。
大好(だいす)きな人(ひと)が自分(じぶん)を必要(ひつよう)としてくれている…
それを実感(じっかん)すること、それはなんて心地(ここち)よいものなのだろう。
渚(なぎさ)「思(おも)いきったことを言(い)ってしまいました…えへへ」
朋也(ともや)「いや、いいよ。すごくやる気(き)でた」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)ですか」
渚(なぎさ)「だったら、よかったです」
気力(きりょく)全開(ぜんかい)で、明日(あした)を迎(むか)えられる気(き)がした。
けど、体力(たいりょく)のほうは、完全(かんぜん)に底(そこ)を突(つ)いていたようで…
俺(おれ)は風呂(ぶろ)から上(あ)がると、渚(なぎさ)が入(はい)るのも待(ま)たず横(よこ)になり、そのまま気(き)を失(うしな)うようにして眠(ねむ)ってしまっていた。
もう、何(なに)をする余力(よりょく)も残(のこ)っていなかったのだ。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:45:22
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5月7日
(
金
)
翌朝(よくあさ)は痛(いた)みで起(お)きた。
案(あん)の定(じょう)、全身(ぜんしん)ひどい筋肉痛(きんにくつう)だった。
何(なに)もできない。寝(ね)ていたい。
もう一度(いちど)目(め)を瞑(つぶ)る。
ああ、心地(ここち)よい。
もう何(なに)も考(かんが)えたくない。
このままでいよう…。
………。
すーすー…。
小(ちい)さな寝息(ねいき)が聞(き)こえてきた。
隣(となり)の布団(ふとん)を見(み)る。
朋也(ともや)(…渚(なぎさ))
きっと、ひとりだったら、俺(おれ)は何(なに)もできなかった。
高校(こうこう)の時(とき)のように、遅刻(ちこく)を繰(く)り返(かえ)して…
そして、幸村(こうむら)のように、俺(おれ)をそこに繋(つな)ぎ止(と)めようとしてくれるような人(びと)も居(い)なくて…
職(しょく)を失(うしな)って…
堕落(だらく)し続(つづ)けて…
最後(さいご)には、どうなってしまっていたんだろう。
渚(なぎさ)の寝顔(ねがお)を見(み)つめたまま、そんなことを考(かんが)える。
でも、今(いま)は守(まも)りたい人(ひと)がいるから…。
朋也(ともや)(頑張(がんば)ろう…)
体(からだ)にむち打(う)って、俺(おれ)は布団(ふとん)から這(は)い出(だ)した。
朋也(ともや)「…おはようございます」
芳野(よしの)「ちゃんと来(き)たな」
芳野(よしの)さんが話(はなし)の輪(わ)から抜(ぬ)けて、俺(おれ)の前(まえ)に座(すわ)った。
朋也(ともや)「そりゃ来(き)ますよ。真剣(しんけん)に勤(つと)めるって決(き)めたっすから」
芳野(よしの)「体中(からだじゅう)痛(いた)くないか?」
朋也(ともや)「………」
痛(いた)かった。半端(はんぱ)じゃなく。
芳野(よしの)「痛(いた)くても仕事(しごと)はしっかりやれ」
芳野(よしの)「すぐに出(で)るから、早(はや)く着替(きが)えろ」
優(やさ)しい言葉(ことば)などなかった。
昨日(きのう)も感(かん)じたことだが、芳野(よしの)さんは、以前(いぜん)手伝(てつだ)った時(とき)とは、俺(おれ)への接(せっ)し方(かた)がまるで違(ちが)う。
朋也(ともや)(今(いま)は、直属(ちょくぞく)の部下(ぶか)なんだから、それも当然(とうぜん)のことか…)
朋也(ともや)(でも、ちょっと寂(さび)しいような…)
そんなことを考(かんが)えながら、煤(すす)にまみれた作業服(さぎょうふく)に着替(きが)える。
芳野(よしの)「岡崎(おかざき)」
袖(そで)を通(とお)そうとして、芳野(よしの)さんに呼(よ)び止(と)められた。
芳野(よしの)「これ、貼(は)っておけ」
朋也(ともや)「なんすか、これ」
芳野(よしの)「湿布(しっぷ)」
朋也(ともや)「あ、ありがとうございます」
芳野(よしの)「気(き)にするな。俺(おれ)もそうだった」
朋也(ともや)「…はあ」
俺(おれ)は頷(うなず)いたが、筋肉痛(きんにくつう)になっている芳野(よしの)さんは想像(そうぞう)できなかった。
着(つ)いた現場(げんば)は、昨日(きのう)と一緒(いっしょ)の場所(ばしょ)だった。
朋也(ともや)「同(おな)じなんですね」
芳野(よしの)「そうだ。最近(さいきん)は単発(たんぱつ)の方(ほう)が少(すく)ないからな」
今日(きょう)の仕事(しごと)は故障(こしょう)した街灯(がいとう)を外(はず)して、新(あたら)しいのと取(と)り替(か)えることだった。
芳野(よしの)「じゃ、始(はじ)めるぞ」
朋也(ともや)「お願(ねが)いします」
一抱(ひとかか)えもある街灯(がいとう)を肩(かた)に担(にな)いで、梯子(はしご)を登(のぼ)る。
昨日(きのう)は割(わり)と簡単(かんたん)だと思(おも)ったが、今日(きょう)は違(ちが)った。
体中(からだじゅう)が悲鳴(ひめい)をあげていた。
俺(おれ)は痛(いた)みを奥歯(おくば)で噛(か)み殺(ころ)しながら、作業(さぎょう)に専念(せんねん)した。
芳野(よしの)「スパナの持(も)ち方(かた)が違(ちが)う。それじゃ力(ちから)が入(はい)らないだろうが」
朋也(ともや)「………」
芳野(よしの)「だから、ビスはドライバーと一緒(いっしょ)に中指(なかゆび)の先(さき)で支(ささ)えて穴(あな)に添(そ)えろ」
朋也(ともや)「………」
芳野(よしの)「ねじ止(ど)め剤(ざい)が付(つ)けすぎなんだよ」
朋也(ともや)「………」
芳野(よしの)「それ、昨日(きのう)やったじゃないか」
朋也(ともや)「………」
芳野(よしの)「集中(しゅうちゅう)しろ。気(き)を抜(ぬ)いてると、怪我(けが)するぞ」
朋也(ともや)「………」
昨日(きのう)にも増(ま)して、怒(おこ)られっぱなしだった。
芳野(よしの)「よし、終(お)わり。帰(かえ)るぞ」
朋也(ともや)「………」
答(こた)える気力(きりょく)もない。
体力(たいりょく)は底(そこ)を突(つ)きかけている上(うえ)、気(き)が滅入(めい)っていた。
軽(けい)トラの助手席(じょしゅせき)に乗(の)ると、崩(くず)れ落(お)ちそうになった。
帰(かえ)ってくるのがやっとだった。
昨日(きのう)の疲労(ひろう)が残(のこ)ったままで、さらに新(あたら)しい疲労(ひろう)を積(つ)み上(あ)げてきた感(かん)じだ。
本当(ほんとう)に慣(な)れる日(ひ)が来(く)るのだろうか…。
こんな辛(つら)さが続(つづ)くというなら、ぞっとする。
朋也(ともや)「ただいま…」
渚(なぎさ)「おかえりなさいです」
昨日(きのう)と同(おな)じように、渚(なぎさ)は台所(だいどころ)に立(た)っていた。
今日(きょう)は手伝(てつだ)おうか、と訊(き)く余裕(よゆう)もなかった。
体(からだ)を引(ひ)きずるようにして、後(うし)ろを通(とお)り抜(ぬ)けると、部屋(へや)に倒(たお)れ込(こ)んだ。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、大丈夫(だいじょうぶ)ですか」
その様子(ようす)を見(み)てか、渚(なぎさ)が手(て)を止(と)めてやってくる。
朋也(ともや)「ああ、大丈夫(だいじょうぶ)…」
渚(なぎさ)「具合悪(ぐあいわる)いですか」
そばに膝(ひざ)をついて訊(き)いた。
朋也(ともや)「いや、本当(ほんとう)、疲(つか)れてるだけ…」
渚(なぎさ)「そうですか…」
渚(なぎさ)「今日(きょう)はスタミナ付(つ)くように、豚(ぶた)さん買(か)ってきました」
渚(なぎさ)「食(た)べて、ゆっくり休(やす)みましょう」
朋也(ともや)「ああ…そうするよ…」
渚(なぎさ)「それでは、もうしばらく待(ま)っててください」
朋也(ともや)「ああ、手伝(てつだ)えなくて、ごめんな」
渚(なぎさ)「いえ、ぜんぜん平気(へいき)です」
立(た)ち上(あ)がり、戻(もど)っていった。
今(いま)、俺(おれ)は渚(なぎさ)に支(ささ)えられている気(き)がした。
ぶっ倒(たお)れた俺(おれ)を心配(しんぱい)して、一目散(いちもくさん)に駆(か)けつけてくれる。
それだけで、ふがいない自分(じぶん)をこんちくしょうと思(おも)える。
腐(くさ)らずに奮起(ふんき)することができた。
夕飯(ゆうはん)を食(た)べる間(あいだ)、渚(なぎさ)の話(はなし)に相(あい)づちを打(う)つだけだった。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、とても疲(つか)れています」
朋也(ともや)「え?」
渚(なぎさ)「疲(つか)れてるのに、一方的(いっぽうてき)に話(はなし)をしてしまって、ごめんなさいでした」
こんちくしょう。
朋也(ともや)「聞(き)いてるだけなんて、楽(らく)だって。いくらでも聞(き)くよ」
渚(なぎさ)「いえ、聞(き)くのも、結構疲(けっこうつか)れると思(おも)います」
渚(なぎさ)「それに、わたしの話(はなし)…退屈(たいくつ)ですし…」
朋也(ともや)「んなことねぇよ」
渚(なぎさ)「ありがとうございます」
渚(なぎさ)「ですが、今日(きょう)は早(はや)く休(やす)みましょう」
朋也(ともや)「………」
朋也(ともや)「ああ…」
俺(おれ)は素直(すなお)に頷(うなず)いていた。
明日(あした)はもっと渚(なぎさ)と話(はなし)ができるように。
渚(なぎさ)「それでは、おやすみなさいです」
朋也(ともや)「おやすみ」
昨日(きのう)よりも一時間早(いちじかんはや)い消灯(しょうとう)。
同時(どうじ)に、俺(おれ)は深(ふか)い眠(ねむ)りに落(お)ちていた。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:46:08
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2009-06-15 11:22
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5月8日
(
土
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翌日(よくじつ)も同(おな)じ場所(ばしょ)にいた。
芳野(よしの)「震(ふる)えるな、ちゃんと固定(こてい)してろ。おまえは貧弱(ひんじゃく)な小僧(こぞう)か」
朋也(ともや)「小僧(こぞう)じゃ…ないっすっ」
口(くち)では否定(ひてい)するも、壊(こわ)れた肩(かた)に足(あし)を引(ひ)っ張(ぱ)られているのは確(たし)かだ。
元通(もとどお)りになることはないにしても、多少(たしょう)の力仕事(ちからしごと)ならとたかをくくっていた。
それでも右肩(みぎかた)をかばいながらでは仕事(しごと)のスピードが上(あ)がらないのは事実(じじつ)だった。
芳野(よしの)「ケースを外(はず)してこい。俺(おれ)は皮膜処理(ひまくしょり)をやっておく」
俺(おれ)は梯子(はしご)を登(のぼ)り、電柱(でんちゅう)に取(と)り付(つ)けられた室外用(しつがいよう)のボックスを外(はず)そうとした。
芳野(よしの)「おまえは馬鹿(ばか)か。そんなの左手(ひだりて)で届(とど)くわけないだろ」
下(した)から芳野(よしの)さんの罵声(ばせい)が飛(と)んだ。
俺(おれ)も馬鹿(ばか)だと思(おも)う。何(なに)しろ、右手(みぎて)を上(うえ)に伸(の)ばせばすぐに届(とど)く位置(いち)にあるのだから。
芳野(よしの)「両手(りょうて)を使(つか)え」
朋也(ともや)「いや、これでもできますからっ」
芳野(よしの)「…なに?」
芳野(よしの)さんの声色(こわいろ)が変(か)わった。やばい。
芳野(よしの)「降(お)りてこい。今(いま)すぐ」
…さんざんに怒(おこ)られた。
芳野(よしの)「何(なん)であんなやりにくい動(うご)きなんだ、おまえは」
朋也(ともや)「いえ、俺(おれ)にはその方(ほう)がやりやすいっす」
芳野(よしの)さんはそうかと呟(つぶや)き、もう何(なに)も言(い)わなかった。
次(つぎ)の現場(げんば)でも難(むずか)しい場面(ばめん)に出(で)くわした。
だが、芳野(よしの)さんはなにも言(い)わずに黙(だま)って見(み)ていた。
一日(いちにち)の仕事(しごと)を終(お)え、助手席(じょしゅせき)に体(からだ)を預(あず)ける。後(あと)は事務所(じむしょ)に戻(もど)るだけだった。
芳野(よしの)「岡崎(おかざき)」
エンジンをかける前(まえ)に芳野(よしの)さんは話(はな)しかけてきた。
朋也(ともや)「…はい、なんすか?」
芳野(よしの)「もう一度(いちど)訊(き)くが、あれの方(ほう)が、本当(ほんとう)にやりやすいのか?」
いきなり問(と)われて、俺(おれ)は答(こた)えに困(こま)った。
芳野(よしの)「どうなんだ?」
朋也(ともや)「…ええ、その方(ほう)が良(い)いです。俺(おれ)は、ですけど」
芳野(よしの)さんはちら、と俺(おれ)を見(み)ただけでまた視線(しせん)を前(まえ)に戻(もど)した。
芳野(よしの)「…手順(てじゅん)が間違(まちが)ってるわけじゃないから、あれでいい」
朋也(ともや)「え?」
芳野(よしの)「そのかわり怪我(けが)するな」
朋也(ともや)「あ、はいっ」
返事(へんじ)すると同時(どうじ)、ぶるん、と車体(しゃたい)がうなった。
今日(きょう)は、歩(ある)けないほど、といった疲(つか)れではなかった。
毎日(まいにち)、十分(じゅうぶん)すぎるほど睡眠(すいみん)を取(と)っているのが良(よ)かったのか。
失(うしな)われた体力(たいりょく)に対(たい)し、ようやく回復(かいふく)が追(お)いついた、という感(かん)じだった。
帰(かえ)ってきてから、初(はじ)めて夕飯(ゆうはん)の手伝(てつだ)いをすることもできた。
と言(い)っても、台所(だいどころ)は狭(せま)すぎてふたりも立(た)てなかったから、出来上(できあ)がった料理(りょうり)を部屋(へや)に運(はこ)ぶだけだったけど。
渚(なぎさ)「お仕事(しごと)のほうはどうでしたか」
朋也(ともや)「相変(あいか)わらずしんどいけど、どうにかやっていけそうだよ」
渚(なぎさ)「そうですか。それはよかったです」
朋也(ともや)「学校(がっこう)のほうはどうだった」
渚(なぎさ)「なにもないです。いつも通(どお)りでした」
悪(わる)いこともなかったのだろうけど、取(と)り立(た)てていいこともなかった、ということだった。
朋也(ともや)「そっか…」
渚(なぎさ)「あ」
渚(なぎさ)が声(こえ)を上(あ)げて箸(はし)を止(と)めていた。
朋也(ともや)「ん?
どうした」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、お箸(はし)、間違(まちが)えてます」
朋也(ともや)「え?
あ、ほんとだ。これ、おまえのだ」
朋也(ともや)「もう、これで食(た)べちゃってるんだけど」
渚(なぎさ)「替(か)えなくていいですか」
朋也(ともや)「えっと…おまえは、まだ使(つか)ってないの?」
渚(なぎさ)「いえ…口(くち)、つけてしまいました」
朋也(ともや)「よし、替(か)えよう」
渚(なぎさ)「…朋也(ともや)くん、なんかヘンなこと考(かんが)えてます」
朋也(ともや)「ばれたか…」
渚(なぎさ)「ちゃんと洗(あら)ってきます。貸(か)してください」
朋也(ともや)「ああ…」
渚(なぎさ)「そんな名残惜(なごりお)しそうな顔(かお)で見(み)ないでください」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、ヘンです」
ようやく冗談(じょうだん)を言(い)う余裕(よゆう)も出(で)てきた。
この生活(せいかつ)にも慣(な)れてきたのかもしれない。
でも、俺(おれ)は、渚(なぎさ)を笑(わら)わせ続(つづ)けると誓(ちか)って、ここに来(き)たのだ。
今(いま)の俺(おれ)は、それが果(は)たせていない。
まだまだ頑張(がんば)りが足(た)らないと思(おも)った。
渚(なぎさ)「それで、明日(あした)のことなんですが…」
箸(はし)を洗(あら)って戻(もど)ってきた渚(なぎさ)が話(はなし)を切(き)り出(だ)す。
渚(なぎさ)「仕事(しごと)はお休(やす)みですか」
朋也(ともや)「ああ、大丈夫(だいじょうぶ)」
そう。明日(あした)は、同棲生活(どうせいせいかつ)を始(はじ)めて最初(さいしょ)の日曜日(にちようび)。
そして、オッサンと約束(やくそく)した、週(しゅう)に一度(いちど)、渚(なぎさ)の顔(かお)を見(み)せに行(い)く日(ひ)。
ふたりでの生活(せいかつ)は、想像(そうぞう)していた以上(いじょう)に大変(たいへん)だったけど…
それでも、俺(おれ)たちはなんとかやっていますと…そう、報告(ほうこく)しにいく日(ひ)だった。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:46:45
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5月9日
(
日
)
俺(おれ)と渚(なぎさ)は、ケーキを持(も)って、実家(じっか)を訪(おとず)れた。
渚(なぎさ)「ただいまです」
店先(みせさき)に暇(ひま)そうに突(つ)っ立(た)っていたオッサンに挨拶(あいさつ)した。
秋生(あきお)「ん…?」
秋生(あきお)「まさかっ…」
秋生(あきお)「いや…幻覚(げんかく)か…?」
秋生(あきお)「はたまた蜃気楼(しんきろう)か…?」
秋生(あきお)「ちがう、本物(ほんもの)だ…」
秋生(あきお)「な…」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)か…」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)なんだなっ!?」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)なんだなああぁーーーーっ!?」
朋也(ともや)「漂流(ひょうりゅう)でもしてたのか、このオッサンは」
渚(なぎさ)「はい、渚(なぎさ)です」
秋生(あきお)「よぉく、戻(もど)ってきたなぁっ!」
渚(なぎさ)を思(おも)いっきり抱(だ)きしめる。
朋也(ともや)「夜(よる)には帰(かえ)るぞ」
秋生(あきお)「ちっ、なんだこいつは。感動(かんどう)の再会(さいかい)シーンをぶち壊(こわ)しにしやがってよぉっ」
秋生(あきお)「はぁ…冷(さ)めた冷(さ)めた。とっとと早苗(さなえ)に会(あ)ってこい」
渚(なぎさ)の体(からだ)を解放(かいほう)して、くわえていたタバコに火(ひ)をつける。
朋也(ともや)「ああ、いこうぜ、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「はい」
店内(てんない)では早苗(さなえ)さんがひとりで店番(みせばん)をしていた。
渚(なぎさ)「ただいまです」
早苗(さなえ)「え…」
早苗(さなえ)「まさか…」
早苗(さなえ)「ううん、幻覚(げんかく)でしょうか…」
早苗(さなえ)「それとも、蜃気楼(しんきろう)?」
早苗(さなえ)「もしかして、本物(ほんもの)ですか…?」
早苗(さなえ)「な…」
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)…」
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)なんですねっ!」
朋也(ともや)「絶対(ぜったい)にネタ合(あ)わせしてるぞ、この親(おや)たちは」
早苗(さなえ)「あれ、ばれました?」
早苗(さなえ)「秋生(あきお)さんのアイデアです」
朋也(ともや)「言(い)われなくてもわかるっす」
早苗(さなえ)「できるだけ再会(さいかい)を劇的(げきてき)にして、渚(なぎさ)を引(ひ)き留(と)めようという作戦(さくせん)です」
暇(ひま)な親(おや)たちである。
早苗(さなえ)「こんなことしても無駄(むだ)ですよね。渚(なぎさ)は朋也(ともや)さんと一緒(いっしょ)に居(い)たいですよね」
渚(なぎさ)「はい、居(い)たいです」
渚(なぎさ)「でも、わたしにはお父(とう)さんもお母(かあ)さんも大切(たいせつ)ですから、とても悩(なや)んでしまいます」
早苗(さなえ)「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ、渚(なぎさ)。居(い)たい場所(ばしょ)に居(い)ればいいんです」
早苗(さなえ)「それで、帰(かえ)ってきたいときに帰(かえ)ってくればいいんです」
渚(なぎさ)「はい、わかりました」
渚(なぎさ)「でも、わたしは朋也(ともや)くんとふたりでがんばると決(き)めましたから…」
渚(なぎさ)「ですから、簡単(かんたん)にはあきらめません」
秋生(あきお)「ちっ、とっとと諦(あきら)めろ」
後(うし)ろにオッサンが立(た)っていた。
秋生(あきお)「俺(おれ)と早苗(さなえ)の大海(たいかい)のような愛(あい)で温々(ぬくぬく)と育(そだ)てられたほうがいいだろ、娘(むすめ)よ」
秋生(あきお)「んなカエルのカンピンタンのようなシオシオな愛(あい)よりな」
ひどい言(い)われようだ。
渚(なぎさ)「それは甘(あま)えだと思(おも)います」
そうだ、言(い)ってやれ。
渚(なぎさ)「大海(たいかい)を出(で)て、水(みず)のないような場所(ばしょ)でも生(い)きていかなければならないと思(おも)います」
渚(なぎさ)「それで…カエルのカンピンタンのように、干(ひ)からびてしまったとしても…」
渚(なぎさ)「いつか雨(あめ)は大地(だいち)を潤(うるお)します」
渚(なぎさ)「その時(とき)は、カエルのカンピンタンも、みずみずしく蘇(よみがえ)ることでしょう」
いや、カンピンタンに水(みず)をかけても戻(もど)らないと思(おも)う。
渚(なぎさ)「だから、どうかその日(ひ)まで、見守(みまも)っていてください」
朋也(ともや)「つっか、待(ま)てっ、結局(けっきょく)俺(おれ)の愛(あい)はカンピンタンなのかよっ」
渚(なぎさ)「それはたとえです」
朋也(ともや)「わかってるっ」
秋生(あきお)「ちっ、頭(あたま)の悪(わる)い奴(やつ)だな、こいつは」
早苗(さなえ)「朋也(ともや)さん、可愛(かわい)いじゃないですか。カエルさんのカンピンタンなんて」
やばい…久々(ひさびさ)にアホアホトライアングルに捕(と)らわれていた。
さっ、と横(よこ)っ飛(と)びで、脱出(だっしゅつ)する。
渚(なぎさ)「……?」
秋生(あきお)「何(なに)やってんだ、こいつは」
朋也(ともや)「いや、なんでもないっす」
渚(なぎさ)「あ、これ、ケーキです。みんなで食(た)べましょう」
渚(なぎさ)が手(て)に下(さ)げていた包(つつ)みを抱(かか)え上(あ)げた。
ケーキを食(た)べながら、団欒(だんらん)。
たった一週間(いっしゅうかん)しか経(た)っていないのに、なんだか頬(ほお)が緩(ゆる)むほどに懐(なつ)かしい。
この4人(ひと)で暮(く)らしていたことが、今(いま)思(おも)うと、滑稽(こっけい)なのだ。
本当(ほんとう)に、楽(たの)しかったのだと思(おも)う。
秋生(あきお)「へぇ…こいつが痴漢(ちかん)で捕(つか)まったってか。そりゃケッサクだな」
渚(なぎさ)「誰(だれ)もそんな話(はな)してないです」
秋生(あきお)「かっ、冗談(じょうだん)だ」
早苗(さなえ)「秋生(あきお)さんは、人(ひと)のこと言(い)えません」
早苗(さなえ)「ふたりきりになった途端(とたん)、セクハラしてくるんです。とても困(こま)ってるんですよ」
ぶっ!
思(おも)わず紅茶(こうちゃ)を吹(ふ)き出(だ)してしまう。
朋也(ともや)「マ、マジっすか」
秋生(あきお)「かっ…あんなの可愛(かわい)いもんじゃねぇかよ!」
この人(ひと)の『可愛(かわい)い』はとんでもなく破廉恥(はれんち)なことに違(ちが)いない。男(おとこ)としては、とても興味(きょうみ)をそそる。
早苗(さなえ)「あんなことされたら、仕事(しごと)に集中(しゅうちゅう)できません」
秋生(あきお)「ちっ、スカートめくりぐらいでピーピー言(い)ってんじゃねぇよっ」
…むちゃくちゃ可愛(かわい)かった!
渚(なぎさ)「お父(とう)さん、小学生(しょうがくせい)みたいです」
秋生(あきお)「ああ、ハッスルパパだぜ」
ハッスルしすぎだ。
秋生(あきお)「まあ、男(おとこ)ってのはそんなもんだよな、同士(どうし)」
いきなり話(ばなし)を振(ふ)られる。
早苗(さなえ)「そうなんですか?」
女性陣(じょせいじん)の視線(しせん)が一手(いって)に集(あつ)まる。とても答(こた)えづらい状況(じょうきょう)だ…。
実際(じっさい)今(いま)も過剰(かじょう)な想像(そうぞう)をしてしまったところだから、否定(ひてい)はしないが…。
秋生(あきお)「娘(むすめ)よ、おまえもこいつにエッチなことされてんだろ。どうだ、正直(しょうじき)に言(い)ってみろ」
渚(なぎさ)「大丈夫(だいじょうぶ)です。朋也(ともや)くんはそんなこと絶対(ぜったい)にできない人(ひと)ですから」
秋生(あきお)「なにぃっ」
渚(なぎさ)の爆弾発言(ばくだんはつげん)Part2。
秋生(あきお)「そ、そうか…いや、ま、そう気(き)を落(お)とすんじゃないぞ、若者(わかもの)よ」
思(おも)いっきり勘違(かんちが)いされている…。
当然(とうぜん)だろう…。
俺(おれ)は、交際相手(こうさいあいて)に『この人(ひと)は不能者(ふのうしゃ)ですから』と宣言(せんげん)されたようなものなのだから…。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんはとても優(やさ)しい人(ひと)です」
秋生(あきお)「そうか、優(やさ)しいのか…そういうのでカバーか…」
哀(あわ)れみの目(め)。
オッサンの中(なか)では、俺(おれ)はとても情(なさ)けない男(おとこ)として位置(いち)づけされてしまったような気(き)がする…。
かといって、今更(いまさら)…
朋也(ともや)「誤解(ごかい)っす。ちゃんと機能(きのう)するっす」
などと親(おや)の前(まえ)で弁解(べんかい)するのも、不気味(ぶきみ)すぎて嫌(いや)だが…。
好きに思わせておく
好(す)きに思(おも)わせておけばいい。俺(おれ)は紅茶(こうちゃ)をすする。
秋生(あきお)「おい、早苗(さなえ)。おまえが、教(おし)えてやるか」
ぶっ!
早苗(さなえ)「はい?
なにをですか?」
秋生(あきお)「いや、冗談(じょうだん)だから、わからなくていい」
秋生(あきお)「ま、つーわけで、男(おとこ)ってのはエッチなもんなんだよ。な、同士(どうし)」
朋也(ともや)「………」
結局(けっきょく)、それを言(い)いたかっただけなのだ、この人(ひと)は。
ケーキを食(た)べ終(お)えると、渚(なぎさ)と早苗(さなえ)さんがふたりで台所(だいどころ)に立(た)ち、仲良(なかよ)く夕飯(ゆうはん)の準備(じゅんび)を始(はじ)めた。
オッサンは店番(みせばん)に戻(もど)り、俺(おれ)もその手伝(てつだ)いをすることにした。
といっても、この時間(じかん)、客(きゃく)はこないのだが…。
秋生(あきお)「ちっ、てめぇは役立(やくた)たずだったのかよっ」
ふたりきりになると、オッサンはいきなりその話題(わだい)を持(も)ち出(だ)してきた。
朋也(ともや)「いや、正常(せいじょう)だけど」
秋生(あきお)「てめぇ、不能(ふのう)だって言(い)ったじゃないかよっ」
朋也(ともや)「言(い)ってねぇよっ、あんたの娘(むすめ)がそう誤解(ごかい)させることを言(い)っただけだっ」
秋生(あきお)「誤解(ごかい)だとぅ!?
朋也(ともや)くんダメなの、って言(い)ってたじゃねぇかよっ!」
朋也(ともや)「んなこと言(い)ってねぇよ!」
秋生(あきお)「なら、元気(げんき)なのか!」
朋也(ともや)「元気(げんき)だよっ!」
秋生(あきお)「思(おも)いっきり元気(げんき)なのかっ!」
朋也(ともや)「思(おも)いっきり元気(げんき)だよっ!」
声(こえ)「おふたりとも、お店(みせ)で騒(さわ)がないでくださいねーっ」
早苗(さなえ)さんの声(こえ)で我(われ)に返(かえ)る。
…変態(へんたい)ふたりが店番(みせばん)をするパン屋(や)になってしまっていた。
秋生(あきお)「じゃあ、なんだ…正常(せいじょう)なのか」
ひとつ咳払(せきばら)いをした後(あと)、小声(こごえ)で訊(き)いてきた。
朋也(ともや)「ああ、人並(ひとな)みには…と思(おも)う」
秋生(あきお)「ってことは、あれか…。つまり、まだ手(て)を出(だ)せずにいるってわけか」
また、答(こた)えづらいことを直球(ちょっきゅう)で訊(き)いてくる人(ひと)だ…。
朋也(ともや)「ああ、そうだよ…。大事(だいじ)に思(おも)ってるんだよ。悪(わる)いか」
秋生(あきお)「いや、悪(わる)かぁない。あいつはまだ学生(がくせい)だからな」
秋生(あきお)「そういうことをすれば、不純異性交遊(ふじゅんいせいこうゆう)になる。つまり校則違反(こうそくいはん)ってなわけだ」
朋也(ともや)「だろ」
秋生(あきお)「だがな…」
秋生(あきお)「あいつはもういい歳(とし)なんだよな」
秋生(あきお)「早苗(さなえ)だって、その歳(とし)の頃(ころ)には、もう渚(なぎさ)、産(う)んでたしな…」
秋生(あきお)「だから、いいと思(おも)うぜ、俺(おれ)は」
秋生(あきお)「やっちゃえ、やっちゃえ!」
秋生(あきお)「朋也(ともや)くん、やっちゃえ、ヒューーーッ!」
この人(ひと)は自分(じぶん)の娘(むすめ)を襲(おそ)わせようとしている…。
渚(なぎさ)「何(なに)をやっちゃうんですか、お父(とう)さん」
秋生(あきお)「う…」
渚(なぎさ)の登場(とうじょう)に固(かた)まる。
渚(なぎさ)「なんか、わたしの名前(なまえ)が出(で)てた気(き)がします」
秋生(あきお)「そうか…?」
渚(なぎさ)「はい。出(で)てました。イタズラですか」
秋生(あきお)「いや、なんていうか…」
渚(なぎさ)「ヘンなこと朋也(ともや)くんに、教(おし)えたらダメです」
渚(なぎさ)「お母(かあ)さんみたいにスカートめくりされたら、お父(とう)さんのせいです」
もっとすごいことを、けしかけられてたのだが…。
秋生(あきお)「大丈夫(だいじょうぶ)だぞ、娘(むすめ)よ。その時(とき)にはめくるスカートもないからな」
朋也(ともや)(ぐあ…)
渚(なぎさ)「えっ、どういう意味(いみ)ですか」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)、好(す)きだ」
渚(なぎさ)「そのごまかし方(かた)は、わたしには通用(つうよう)しないですっ」
秋生(あきお)「ちっ…」
オッサンがおまえがやれ、と俺(おれ)に向(む)かって顎(あご)で指図(さしず)していた。
渚(なぎさ)「どんな悪戯(いたずら)教(おし)えたんですかっ」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)、好(す)きだぞ」
渚(なぎさ)「え?
あ、ありがとうございます」
渚(なぎさ)「その、わたしも…」
渚(なぎさ)「ああっ、朋也(ともや)くんには引(ひ)っかかってしまいましたっ」
アホな子(こ)だ…。
夕飯(ゆうはん)をいただいた後(あと)、明日(あした)のために早(はや)めに帰路(きろ)につく。
渚(なぎさ)「これ、肉(にく)じゃがです」
渚(なぎさ)は大(おお)きなタッパーを持(も)っていた。
渚(なぎさ)「二日分(ふつかぶん)あります」
渚(なぎさ)が早苗(さなえ)さんとふたりで作(つく)った手料理(てりょうり)だった。それを大事(だいじ)そうに抱(かか)えて歩(ある)く。
朋也(ともや)「………」
朋也(ともや)「むちゃくちゃ楽(たの)しそうだったな、おまえ」
渚(なぎさ)「はい、お母(かあ)さんと料理(りょうり)するのは楽(たの)しいです」
渚(なぎさ)「お母(かあ)さん、すごくドジですから」
渚(なぎさ)「わたしもですけど…えへへ」
言(い)って、笑(わら)う。
長(なが)く見(み)ていなかった笑顔(えがお)に思(おも)えて、つらい。
でも、こいつは俺(おれ)と一緒(いっしょ)に居(い)てくれると言(い)ってくれたのだから…
俺(おれ)と頑張(がんば)るって、決(き)めてくれたのだから…
だから、俺(おれ)も頑張(がんば)らないとな…。
でも、笑(わら)わせることは努力(どりょく)で叶(かな)うことなのだろうか。
それは手近(てぢか)な何(なに)かで幸(しあわ)せを一瞬(いっしゅん)にして作(つく)り上(あ)げようとすることだ。
そんなことできるのだろうか。
今(いま)はできなくても、いいのだろうか。
いつか耐(た)え抜(ぬ)いた先(さき)に、笑(わら)えたらいいのだろうか。
その途中(とちゅう)で、挫(くじ)けてしまわないだろうか。
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん」
朋也(ともや)「うん?」
渚(なぎさ)「考(かんが)え事(ごと)、してますか?」
朋也(ともや)「いや、別(べつ)に。なに?」
渚(なぎさ)「お話(はな)して帰(かえ)りましょう。そのほうが楽(たの)しいです」
朋也(ともや)「ああ…そうだな」
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、起(お)きてますか」
朋也(ともや)「ああ…」
渚(なぎさ)「昼間(ひるま)に言(い)ったこと…まずかったでしょうか」
朋也(ともや)「うん?
なにが」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんは…」
渚(なぎさ)「そんなこと絶対(ぜったい)にできない人(ひと)ですから…って」
ぎくっ。
俺(おれ)は体(からだ)を硬直(こうちょく)させる。
まさか、渚(なぎさ)からそんな話題(わだい)を…しかも消灯後(しょうとうご)に振(ふ)ってくるとは思(おも)わなかった。
渚(なぎさ)「お父(とう)さん、ものすごく驚(おどろ)いてました」
朋也(ともや)「いや、あれは違(ちが)う意味(いみ)でだよ…」
朋也(ともや)「それに本当(ほんとう)のことだしさ…」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)だってさ、そんなことされたら嫌(いや)だろ…?」
渚(なぎさ)「あれは意味(いみ)が違(ちが)います」
朋也(ともや)「え…?」
渚(なぎさ)「お父(とう)さんが冗談(じょうだん)でお母(かあ)さんにしているみたいなことは、朋也(ともや)くんは絶対(ぜったい)にしないという意味(いみ)です」
朋也(ともや)「あ、ああ。わかってる。俺(おれ)には伝(つた)わったよ」
渚(なぎさ)「だったら、良(よ)かったです」
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「でも、普通(ふつう)に…」
話(はなし)は続(つづ)いていた。
朋也(ともや)「あん?」
渚(なぎさ)「普通(ふつう)に、その…そういうのは…」
渚(なぎさ)「嫌(いや)じゃないと思(おも)います…」
朋也(ともや)「………」
再(ふたた)び体(からだ)が緊張(きんちょう)してくる。
渚(なぎさ)「あの…朋也(ともや)くん…そういうこと、我慢(がまん)してるんでしたら…」
渚(なぎさ)「我慢(がまん)してもらうこと…ないです…」
黙ってじっとしている
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「どうしますか…」
渚(なぎさ)「…わたしから…のほうがいいですか」
渚(なぎさ)「その…わたし、年上(としうえ)ですので」
年上(としうえ)から何(なに)かをすることが自然(しぜん)なんて、聞(き)いたことがなかった。
でも、それが渚(なぎさ)なりの精一杯(せいいっぱい)の努力(どりょく)なのだろう。
そういうことを我慢(がまん)しているだろう俺(おれ)への、思(おも)いやりなのだろう。
渚(なぎさ)が体(からだ)を起(お)こし、近(ちか)づいてくるのがわかった。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、聞(き)いていますか…」
そう耳元(みみもと)で囁(ささや)かれた。
じゃあ、頼(たの)む…と言(い)ってしまえば…
取(と)り返(かえ)しのつかないことになってしまうかもしれない。
怖(こわ)さもあった。
でも、俺(おれ)は渚(なぎさ)が大好(だいす)きだったから…
大好(だいす)きな渚(なぎさ)にしてもらえることがあるんだったら…
してもらいたい。当然(とうぜん)だった。
でも、今(いま)の俺(おれ)に、そんなものを得(う)る資格(しかく)があるのだろうか…。
そんなに俺(おれ)は頑張(がんば)っているのだろうか。
よくわからない…。
朋也(ともや)「………」
ああ、早(はや)く答(こた)えないと…。
渚(なぎさ)「あの…」
俺(おれ)が決断(けつだん)するよりも早(はや)く…渚(なぎさ)が口(くち)を開(ひら)いていた。
渚(なぎさ)「隣(となり)、入(はい)ります」
布団(ふとん)がめくられて…渚(なぎさ)がそっと滑(すべ)り込(こ)んでくる。
俺(おれ)の返事(へんじ)がないのは、ただ気(き)を使(つか)っているだけなのだと…そう思(おも)われているのだ。
何(なに)か言(い)わなくては、と思(おも)った。
けど、金縛(かなしば)りにでもあったかのように、俺(おれ)は何(なに)もできずにいた。
すりすり…
渚(なぎさ)が布団(ふとん)の中(なか)で、動(うご)く。
俺(おれ)の体(たい)にぴったりと密着(みっちゃく)すると…腕(うで)を腰(こし)に回(まわ)してきた。
渚(なぎさ)の体温(たいおん)が、半身(はんしん)に伝(つた)わってくる。
ものすごく熱(あつ)く感(かん)じられた。
こんなにも密着(みっちゃく)したことなんてなかった。
渚(なぎさ)と、くっついている。
胸(むね)が高鳴(たかな)る。
鼓動(こどう)が激(はげ)しい。
今(いま)まで生(い)きてきた中(なか)で、一番(いちばん)、速(はや)く脈(みゃく)を打(う)っている。間違(まちが)いない。
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)が俺(おれ)の首筋(くびすじ)に鼻(はな)を押(お)しつけた。
渚(なぎさ)の鼻息(はないき)も熱(あつ)く…その部分(ぶぶん)が火照(ほて)る。
さらに、腰(こし)に回(まわ)した腕(うで)に力(ちから)を入(い)れて…俺(おれ)を抱(だ)いてくれた。
それだけのことで…俺(おれ)はこれ以上(いじょう)ない幸(しあわ)せな気分(きぶん)になる。
渚(なぎさ)の腕(うで)の中(なか)にいる自分(じぶん)。
こんなにも俺(おれ)は、渚(なぎさ)に愛(あい)されている。
俺(おれ)が大好(だいす)きな、渚(なぎさ)に。
渚(なぎさ)「………」
そして、渚(なぎさ)は…そのままじっとしていた。
俺(おれ)は幸福感(こうふくかん)と緊張感(きんちょうかん)に包(つつ)まれたままでいた。
しばらくして、俺(おれ)はようやく気(き)づく。
渚(なぎさ)の精一杯(せいいっぱい)は、ここまでなんだと。
それに気(き)づいたとき、一気(いっき)に緊張(きんちょう)が解(と)け、俺(おれ)は思(おも)わず吹(ふ)き出(だ)してしまっていた。
渚(なぎさ)「あの…なんで笑(わら)うんですか…」
首(くび)から顔(かお)を離(はな)して、渚(なぎさ)が言(い)った。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、未(いま)だにわたしを子供(こども)みたいに思(おも)ってます」
渚(なぎさ)「わたしのほうが、年上(としうえ)です。人生(じんせい)の先輩(せんぱい)です」
朋也(ともや)「ああ、わかってるって」
渚(なぎさ)「じゃ、どうして笑(わら)ったんですか」
朋也(ともや)「いや…なんていうんだろ…幸(しあわ)せだから」
渚(なぎさ)「あ…幸(しあわ)せですか…よかったです」
渚(なぎさ)「でも、やっぱり笑(わら)うのはヘンですっ」
朋也(ともや)「じゃあ、どうしたらいい。息(いき)を荒(あら)くすればいいのか?」
渚(なぎさ)「笑(わら)うよりは、それっぽいと思(おも)います…」
朋也(ともや)「じゃ、抱(だ)きしめてみて」
渚(なぎさ)「はい…」
きゅっ。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)…」
渚(なぎさ)「はい…」
朋也(ともや)「もっと強(つよ)く…」
渚(なぎさ)「あ、はい…」
ぎゅっ。
渚(なぎさ)「どうでしょうかっ…」
朋也(ともや)「すげぇいい…」
抱(だ)きしめてもらってるだけだが…。
朋也(ともや)「あと…耳(みみ)の穴(あな)に息(いき)、吹(ふ)きかけてくれたら、もう最高(さいこう)…」
渚(なぎさ)「はい…わかりましたっ…」
渚(なぎさ)「ふーっ」
朋也(ともや)「もっと強(つよ)くっ…」
渚(なぎさ)「ふーっ!」
…マジ最高(さいこう)。
端(はし)から見(み)れば、ままごと並(なみ)に滑稽(こっけい)だったのだろうけど…
でも、今(いま)の俺(おれ)たちにとっては、最高(さいこう)の愛(あい)し合(あ)い方(がた)だった。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:47:25
がんばれるなら、がんばるべきなんです。
進めるなら、前に進むべきなんです。
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