呼ぶ「…渚(なぎさ)っ!」
その名(な)を叫(さけ)んでいた。
「俺(おれ)は、ここにいるぞっ!」
「………」
渚(なぎさ)がもう一度(いちど)、振(ふ)り返(かえ)る。
俺(おれ)の顔(かお)を見(み)た。
「…よかったです」
「声(こえ)かけてもらえて」
「そうかよ…」
「もしかしたら、朋也(ともや)くん…わたしと出会(であ)わなければよかったとか…」
「そんなこと思(おも)ってるんじゃないかって…」
「すごく不安(ふあん)でした…」
「………」
「でも、わたしは、朋也(ともや)くんと出会(であ)えてよかったです」
「とても、幸(しあわ)せでした」
「そうかよ…」
「だから、どうか…」
「もう、迷(まよ)わないでください」
「これから先(さき)、どんなことが待(ま)っていようとも…」
「わたしと出会(であ)えたこと、後悔(こうかい)しないでください」
「………」
「ダメ、でしょうか…」
「………」
「いや…」
「わかった…後悔(こうかい)しない…」
「おまえと出会(であ)えたこと、胸(むね)を張(は)って…生(い)き続(つづ)ける」
「そうですか…」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑(ほほえ)んだ。
「じゃ、いこうか」
「はい」
俺(おれ)たちは坂(さか)を登(のぼ)っていく。
「朋也(ともや)くんも、だんご大家族(だいかぞく)、好(す)きになってほしいです」
「そうだな、考(かんが)えておくよ」
「はいっ」
見上(みあ)げる坂(さか)の向(む)こうは…光(ひかり)に包(つつ)まれていた。
「えへへ…」
渚(なぎさ)の笑顔(えがお)が…
大好(だいす)きな笑顔(えがお)が…消(き)えていく。
光(ひかり)がまぶしくて、まぶしくて…。
待(ま)ってくれ…。
消(き)えないでくれ…。
…渚(なぎさ)ぁっ!
一際(ひときわ)まぶしい光(ひかり)が…自分(じぶん)の手(て)の中(なか)にあった。
包(つつ)み込(こ)むようにして。
温(あたた)かかった。
声(こえ)がして、手(て)を引(ひ)かれた気(き)がした。
もう、光(ひかり)は…全身(ぜんしん)を包(つつ)んでいた。
「お連(つ)れしましょう…」「この町(まち)の、願(ねが)いが叶(かな)う場所(ばしょ)に」「ああ…」今(いま)、終(お)わる。街(まち)の思(おも)いに連(つ)れられて…その長(なが)い、長(なが)い旅(たび)が。手(て)を伸(の)ばす。無数(むすう)の…光(ひかり)と共(とも)に。[wrap=
渚エピローグ,0,]
………。
…掴(つか)んでいた。
渚(なぎさ)の手(て)を。
消(き)えたと思(おも)った、この手(て)を。
その先(さき)…じっと、渚(なぎさ)が俺(おれ)の顔(かお)を見(み)ていた。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん…」
渚(なぎさ)の声(こえ)。
大好(だいす)きな人(ひと)の声(こえ)。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)…」
返(かえ)す声(こえ)はかすれていた。
渚(なぎさ)「どうしましたか、朋也(ともや)くん…」
朋也(ともや)「いや、なにも…」
手(て)を強(つよ)く握(にぎ)る。
渚(なぎさ)も強(つよ)く、握(にぎ)り返(かえ)してくれる。
渚(なぎさ)「ありがとうございます、朋也(ともや)くん」
朋也(ともや)「なにが…」
渚(なぎさ)「ずっと、握(にぎ)っていてくれて…」
朋也(ともや)「いや…こんなことぐらいしかできないしさ…」
渚(なぎさ)「ありがとうございます…」
その言葉(ことば)を繰(く)り返(かえ)した。
声(こえ)「よく頑張(がんば)りましたね」
背中(せなか)で八木(やぎ)さんの声(こえ)がした。
おまえさんもよくやってくれた、ありがとよ、とオッサンが礼(れい)を言(い)っていた。
早苗(さなえ)「朋也(ともや)さん、汐(うしお)を産湯(うぶゆ)につけてあげてくれませんか」
朋也(ともや)「ああ、はい」
そう、それは俺(おれ)の最初(さいしょ)の仕事(しごと)だったはずだ。
オッサンが湯(ゆ)を張(は)ってくれたベビーバスに、俺(おれ)はそっと汐(うしお)をつけた。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、がんばってください」
渚(なぎさ)も見守(みまも)ってくれている。
朋也(ともや)「ああ、任(まか)せろ」
といっても、緊張(きんちょう)する…。
早苗(さなえ)「首(くび)に手(て)を添(そ)えてあげてくださいね」
早苗(さなえ)「左手(ひだりて)で支(ささ)えながら、右手(みぎて)でお湯(ゆ)をかけるんです」
そう早苗(さなえ)さんが教(おし)えてくれる。
言(い)われたとおり、小(ちい)さな体(からだ)にぬるいお湯(ゆ)をかけていく。
早苗(さなえ)「頭(あたま)はまだ濡(ぬ)らさないほうがいいですね」
早苗(さなえ)「ガーゼで拭(ふ)いてあげてください」
そうして汐(うしお)の体(からだ)を洗(あら)い終(お)える。
柔(やわ)らかいタオルで撫(な)でるように拭(ふ)き、肌着(はだぎ)に包(つつ)む。
小(ちい)さくて、容易(ようい)く壊(こわ)れてしまいそうな存在(そんざい)…
でも、その奥(おく)には、命(いのち)がある。
まっさらで、逞(たくま)しい命(いのち)だ。
朋也(ともや)(ああ…)
その胸(むね)に抱(だ)いて、俺(おれ)は気(き)づいた。
朋也(ともや)(なんて、強(つよ)いんだろう、こいつは…)
こいつが、これから歩(あゆ)んでいく道(みち)。
それがどんな険(けわ)しいもので…
そして、どんな長(なが)いものであっても…
きっと、強(つよ)く生(い)きていく。
そんな気(き)がした。
朋也(ともや)(そう…渚(なぎさ)の子(こ)だもんな…)
朋也(ともや)(強(つよ)いに決(き)まってるよな…)
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、おつかれさまでした」
渚(なぎさ)のねぎらいの声(こえ)。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん」
その後(あと)、何(なに)かに気(き)づいたように俺(おれ)の名(な)を呼(よ)ぶ。
朋也(ともや)「どうした」
渚(なぎさ)「窓(まど)の外(そと)、見(み)てください」
渚(なぎさ)「とても、きれいです」
朋也(ともや)「え…?」
俺(おれ)は窓(まど)によっていき、カーテンを開(あ)けはなった。
雪(ゆき)だ…。
春(はる)に?
いや…
…光(ひかり)だ。
たくさんの、光(ひかり)だ。
渚(なぎさ)「もし…」
渚(なぎさ)「町(まち)に人(ひと)と同(おな)じように、意志(いし)や心(こころ)があるとして…」
渚(なぎさ)「そして、そこに住(す)む人(ひと)たちを幸(しあわ)せにしようって…」
渚(なぎさ)「そんな思(おも)いで、いるとしたら…」
渚(なぎさ)「こんな奇跡(きせき)も、そんな町(まち)のしわざかもしれないです」
いや…奇跡(きせき)はこれからたくさん起(お)こるのだろう。
そんな気(き)がしていた。
渚(なぎさ)「でも、それは奇跡(きせき)じゃないですよね」
渚(なぎさ)「町(まち)を大好(だいす)きな人(ひと)が、町(まち)に住(す)み…」
渚(なぎさ)「人(ひと)を好(す)きな町(まち)が、人(ひと)を愛(あい)する…」
渚(なぎさ)「そんな、誰(だれ)にでもある感情(かんじょう)から生(う)まれるものです」
渚(なぎさ)「この町(まち)だけじゃないです」
渚(なぎさ)「どんな町(まち)だって、そうです」
渚(なぎさ)「わたしたちは町(まち)を愛(いと)して、町(まち)に育(はぐく)まれてるんです」
渚(なぎさ)「そう思(おも)います」
朋也(ともや)「なぁ…」
朋也(ともや)「町(まち)は、大(おお)きな家族(かぞく)か」
渚(なぎさ)「はい。町(まち)も人(ひと)も、みんな家族(かぞく)です」
朋也(ともや)「そっか…」
渚(なぎさ)「だんご大家族(だいかぞく)です」
ああ…そうか。
そうだったのか。
渚(なぎさ)はもしかしたら、出会(であ)った頃(ころ)から…
いや、もっと昔(むかし)から気(き)づいていたのだろう。
だから、渚(なぎさ)は誰(だれ)も嫌(きら)いにならない。
誰(だれ)のためでも、一生懸命(いっしょうけんめい)に頑張(がんば)る。
それは、家族(かぞく)だからだ。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんも、そろそろ、だんご大家族(だいかぞく)、好(す)きになってほしいです」
朋也(ともや)「もう十分(じゅうぶん)、好(す)きだよ」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)ですかっ」
朋也(ともや)「ああ」
渚(なぎさ)「じゃあ、今(いま)から、汐(しお)ちゃんのために、歌(うた)ってあげましょう」
朋也(ともや)「マジ…?」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)「だんごっ…だんごっ…」
ひとりで歌(うた)い始(はじ)める渚(なぎさ)。
思(おも)わず笑(わら)ってしまう。
そして、俺(おれ)も途中(とちゅう)から合(あ)わせて歌(うた)った。
ずっとずっと歌(うた)っていよう。
今日(きょう)からの思(おも)い出(で)を…
この子(こ)と…
この町(まち)のために。[/wrap]
[wrap=
エピローグ,0,]
公子(こうこ)「ほら、そんなにヘソ曲(ま)げないの」
風子(ふうこ)「曲(ま)がりまくりです」
風子(ふうこ)「さっきの人(ひと)はとても失礼(しつれい)です」
風子(ふうこ)「風子(ふうこ)、小学生(しょうがくせい)じゃないです」
公子(こうこ)「ふぅちゃん、体小(からだちい)さいから、間違(まちが)えられても仕方(しかた)がないよ」
風子(ふうこ)「体(からだ)が小(ちい)さくても、大人(おとな)の風格(ふうかく)で気(き)づいてほしいです」
公子(こうこ)「ふぅちゃん、自分(じぶん)が思(おも)ってる以上(いじょう)に大人(おとな)の風格(ふうかく)ないよ?」
風子(ふうこ)「今(いま)の言葉(ことば)、胸(むね)に突(つ)き刺(さ)さりました」
風子(ふうこ)「風子(ふうこ)、傷(きず)つきました」
風子(ふうこ)「もう、傷(きず)モノです」
公子(こうこ)「ヘンな言葉(ことば)、使(つか)わないの」
風子(ふうこ)「風子(ふうこ)、大人(おとな)です」
公子(こうこ)「あ、それじゃない?
自分(じぶん)のことを風子(ふうこ)って言(い)うのが、子供(こども)っぽく思(おも)われる原因(げんいん)なのかも」
風子(ふうこ)「なんて言(い)えばいいですか」
風子(ふうこ)「アタイ、ですか」
風子(ふうこ)「ねぇ、アタイ、もう十分(じゅうぶん)大人(おとな)なんだよ…ですか」
風子(ふうこ)「エッチですっ」
公子(こうこ)「自分(じぶん)で言(い)って、自分(じぶん)で突(つ)っ込(こ)まないの」
公子(こうこ)「普通(ふつう)に、わたし、でいいと思(おも)うよ?」
風子(ふうこ)「わたし、ですか」
風子(ふうこ)「ねぇ、わたし、もう十分(じゅうぶん)大人(おとな)なんだよ…ですか」
風子(ふうこ)「エッチですっ」
公子(こうこ)「そのセリフだと、どう言(い)ったって、エッチだと思(おも)うよ」
風子(ふうこ)「風子(ふうこ)、お腹(なか)がすきました…」
公子(こうこ)「もう、諦(あきら)めたんだね…」
風子(ふうこ)「ファミリーレストランに行(い)きたいです」
公子(こうこ)「うん、検査(けんさ)終(お)わってから、いこうね」
風子(ふうこ)「もう、風子(ふうこ)、体(からだ)、どこも悪(わる)くないです」
風子(ふうこ)「なので、今(いま)から行(い)きます」
公子(こうこ)「ダメっ」
風子(ふうこ)「早(はや)くいかないと、ハンバーグがなくなってしまいますっ」
公子(こうこ)「たくさんあるから、大丈夫(だいじょうぶ)」
風子(ふうこ)「一週間前(いっしゅうかんまえ)からみんながハンバーグを頼(たの)み続(つづ)けていたら、なくなりますっ」
公子(こうこ)「そんな偶然(ぐうぜん)ないから、大丈夫(だいじょうぶ)」
風子(ふうこ)「そう言(い)って、風子(ふうこ)に検査(けんさ)を受(う)けさせるつもりですっ」
公子(こうこ)「ふぅちゃんが、そう言(い)って、逃(に)げようとしてるだけじゃない」
風子(ふうこ)「そうともいいます」
公子(こうこ)「そうとしか言(い)えないの」
風子(ふうこ)「なかなか手厳(てきび)しいです」
風子(ふうこ)「さすが、おねぇちゃんです」
公子(こうこ)「もう、ふぅちゃん…わけわかんないこと言(い)って、あんまりお姉(ねえ)ちゃんを困(こま)らせないでね?」
風子(ふうこ)「時(とき)に風子(ふうこ)のクレバーさは、人(ひと)を傷(きず)つけてしまうそうです」
公子(こうこ)「言(い)ってるそばから、わけわかんないこと言(い)わないの」
公子(こうこ)「ほら、もう、病院(びょういん)、すぐそこだよ?」
公子(こうこ)「ハンバーグがなくなってたら、お姉(ねえ)ちゃんが、作(つく)るから」
風子(ふうこ)「冷(さ)めない鉄製(てっせい)のお皿(さら)で出(で)てきますか」
公子(こうこ)「出(だ)します、出(だ)します」
風子(ふうこ)「なら、仕方(しかた)がないです…」
公子(こうこ)「それにね、体(からだ)が悪(わる)くなくても、健康(けんこう)かどうかをちゃんと定期的(ていきてき)に調(しら)べないと」
公子(こうこ)「健康(けんこう)だって言(い)われたら、安心(あんしん)して過(す)ごせるでしょ?」
公子(こうこ)「風子(ふうこ)が健康(けんこう)だって言(い)われたら、お姉(ねえ)ちゃんも、安心(あんしん)できるから」
公子(こうこ)「ね?」
風子(ふうこ)「………」
風子(ふうこ)「風子(ふうこ)…心配(しんぱい)かけてますか」
公子(こうこ)「え?
ううん、そんなにはかけてないよ」
風子(ふうこ)「全身解剖(ぜんしんかいぼう)して、安心(あんしん)してくださいっ」
公子(こうこ)「また、わけわからないこと言(い)わないの」
公子(こうこ)「定期的(ていきてき)に検査(けんさ)受(う)けてくれるだけで、お姉(ねえ)ちゃんは安心(あんしん)」
風子(ふうこ)「そうですか…」
風子(ふうこ)「では、早(はや)く行(い)きます」
風子(ふうこ)「おねぇちゃん、歩(ある)くの遅(おそ)いです」
風子(ふうこ)「ちゃっちゃと行(い)きましょう」
公子(こうこ)「ほんと、この子(こ)は、もう…」
どすんっ。
公子(こうこ)「って、言(い)ってるそばから、立(た)ち止(ど)まらないで、ふぅちゃんっ」
風子(ふうこ)「………」
公子(こうこ)「ふぅちゃん、今度(こんど)は何(なに)?」
風子(ふうこ)「匂(にお)いがします」
公子(こうこ)「ハンバーグの?」
風子(ふうこ)「おねぇちゃんと一緒(いっしょ)にしないでくださいっ」
公子(こうこ)「今(いま)の、必死(ひっし)にふぅちゃんに合(あ)わせてみたんだけど」
風子(ふうこ)「失礼(しつれい)です。もう一度(いちど)言(い)い直(なお)すので、なんの匂(にお)いか訊(き)いてください」
公子(こうこ)「はいはい」
風子(ふうこ)「匂(にお)いがします」
公子(こうこ)「なんの?」
風子(ふうこ)「この匂(にお)いは…そう」
風子(ふうこ)「…可愛(かわい)い匂(にお)いです」
公子(こうこ)「それ、答(こた)えになってないよ?」
風子(ふうこ)「ニュアンスでわかってほしかったです」
公子(こうこ)「なぞなぞ?」
風子(ふうこ)「失礼(しつれい)です。アートです」
公子(こうこ)「また、わけわかんないこと言(い)ってる。ふぅちゃん、自覚(じかく)ある?」
風子(ふうこ)「おねぇちゃんは、学校(がっこう)の先生(せんせい)だったから現実的(げんじつてき)すぎるんです」
公子(こうこ)「お姉(ねえ)ちゃんは、美術(びじゅつ)の先生(せんせい)だったの。アート。わかる?」
風子(ふうこ)「なら、風子(ふうこ)の言(い)うこと、とらえてください」
公子(こうこ)「とらえどころがないです」
風子(ふうこ)「そうですか」
風子(ふうこ)「なら、現実至上主義(げんじつしじょうしゅぎ)のおねぇちゃんにわかりやすく言(い)います」
公子(こうこ)「そうしてもらえると、助(たす)かります」
風子(ふうこ)「助(たす)けましょう」
風子(ふうこ)「では、もう一度(いちど)言(い)うので、なんの匂(にお)いか訊(き)いてください」
公子(こうこ)「はいはい」
風子(ふうこ)「誰(だれ)かがいます」
公子(こうこ)「え?」
風子(ふうこ)「え?じゃないです」
公子(こうこ)「質問(しつもん)変(か)わってるよ?
今(いま)の質問(しつもん)に、なんの匂(にお)いか訊(き)くの?」
風子(ふうこ)「そうです」
公子(こうこ)「それだとお姉(ねえ)ちゃん、ヘンな人(ひと)だよ?」
風子(ふうこ)「大丈夫(だいじょうぶ)です。風子(ふうこ)がフォローします」
風子(ふうこ)「もう一度(いちど)いきます」
公子(こうこ)「はい」
風子(ふうこ)「誰(だれ)かがいます」
公子(こうこ)「なんの匂(にお)い?」
風子(ふうこ)「きっと…風子(ふうこ)に会(あ)いにきたんです」
公子(こうこ)「ぜんっぜん、フォローしてくれてないよね?」
風子(ふうこ)「どうして、驚(おどろ)いてくれないんですか」
風子(ふうこ)「誰(だれ)かが風子(ふうこ)に会(あ)いにきたって言(い)ってるんです」
公子(こうこ)「どうか、こんな子(こ)でも、たくさん友達(ともだち)ができますように…」
風子(ふうこ)「もう一度(いちど)いきます」
公子(こうこ)「お望(のぞ)み通(どお)りに」
風子(ふうこ)「誰(だれ)かがいます」
公子(こうこ)「なんの匂(にお)い?」
風子(ふうこ)「きっと…風子(ふうこ)に会(あ)いにきたんです」
公子(こうこ)「えっ、どういうことですかっ」
風子(ふうこ)「…可愛(かわい)らしい匂(にお)いです」
公子(こうこ)「もう文脈(ぶんみゃく)めちゃくちゃだよね」
風子(ふうこ)「そこで、眠(ねむ)っています」
風子(ふうこ)「誰(だれ)かに起(お)こされるのを待(ま)ってるんです」
風子(ふうこ)「ですので…」
風子(ふうこ)「いってきますっ」
公子(こうこ)「えっ、ふぅちゃん、どこ行(い)くのっ?」
風子(ふうこ)「おねぇちゃんも会(あ)いたかったら、早(はや)くきてください。あそこに生(は)えてる木(き)の下(した)ですっ」
公子(こうこ)「誰(だれ)がいるのっ?」
風子(ふうこ)「わからないです」
風子(ふうこ)「でも…」
風子(ふうこ)「とても、可愛(かわい)らしい子(こ)ですっ」
公子(こうこ)「ふぅちゃんってば」
公子(こうこ)「ふぅちゃーーーんっ」
公子(こうこ)「ほんと、あの子(こ)は、もう…」
「いますか」「風子(ふうこ)です」「あなたのお名前(なまえ)はなんていうんですか」「教(おし)えてください」「風子(ふうこ)とお友達(ともだち)になって、一緒(いっしょ)に遊(あそ)びましょう」「楽(たの)しいことは…」「…これから始(はじ)まりますよ」[/wrap]